日本生理学雑誌 第77巻5号

CONTENTS

表紙の説明

〈表紙の図〉

第92 回日本生理学会大会

演題番号:P3-286

演題名:睡眠時大脳皮質自発活動の2 光子イメージング

Spatio-temporal dynamics of calcium activity in the cortex of naturally sleeping and awake mice

演者:石井 亮1,辻野なつ子1,上田壮志1,柳沢正史1,2

所属:1 筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS),2 テキサス大学サウスウェス タン医学センター

睡眠は脳において不可欠かつ不可避な生理現象であり,睡眠の不足は睡眠でしか補えな い.その代替不可能な重要性にも関わらず,睡眠に関わる多くの問題はなおざりにされて いる.睡眠とはそもそも脳のどのような状態なのだろうか.睡眠の詳細な実態に迫るべく, 我々は睡眠によって最も顕著な影響を受ける大脳皮質に着目し,その睡眠に伴う自発活動 の変化を2 光子励起イメージング法により光学計測した.

A.拘束ストレスの睡眠への影響の大きさと睡眠の自発性を考慮し,トラックボール型ト レッドミルシステムを採用した.これによりマウスの大脳皮質を無麻酔かつ頭部以外非拘 束下で観察した.

B.イメージングと同時に微小電極による脳波・筋電図記録を行い,覚醒とノンレム睡眠 さらにレム睡眠の判定を行った.各々上段が脳波,下段が筋電図.馴化によりマウスは顕 微鏡下でも自然な睡眠を示した.

C.蛍光分子tdTomato の2 光子イメージング.GABA 作動性ニューロン特異的にtdTomato を発現する遺伝子改変マウスを作製し,in vivo においてニューロンタイプの同定を 可能にした.

D.Ca2+感受性蛍光プローブGCaMP をアデノ随伴ウイルスベクターによってニューロン に発現させ,覚醒及び睡眠中の大脳皮質における自発的なCa2+活動のライブイメージング を行った.

E.D の視野におけるCa2+動態の経時的計測.蛍光強度の変化が神経活動を反映する.

本研究において利益相反に関わる事項はありません.