018.発達脳における神経回路の再編成:送られる情報自体がスイッチする

脳内では数百億個以上の神経細胞がお互いに複雑に連絡を取り合って神経回路が形成されています。子供の脳機能が刻々とかわるのは、例えば同じ刺激を与えても活動する回路自体が発達とともに変化するためであると考えられます。そのメカニズムとして余剰連絡の除去などの回路(配線)自体の変化や、シナプスにおいて伝達物質(情報)の放出様式や受容体の発達変化について多くの報告がなされてきました。 今回、聴覚中継路である内側台形体核ニューロンから外側上オリーブ核(lateral superior olive nucleus: LSO)に投射する神経終末から放出される伝達物質自体が未熟期のGABAからGABA+グリシン同時放出の時期を経て、成熟期のグリシンへと“単一神経終末内“において徐々に発達スイッチすることが電気生理学的および免疫組織学的手法を用いて明らかになりました。脳機能の発達再編成において”中枢神経細胞間で伝達される情報の種類自体がスイッチする”という全く新しいメカニズムを付け加えることが出来ました(Nature Neuroscience, 7(1): 17-23、2004)。 この結果は同雑誌の表紙およびReview and Newsに“Developing neurons make the switch”(Nature Neuroscience. 7, 7-8.2004)としてトピックとして取り挙げられました。

語句説明

シナプス:神経細胞から次の神経細胞に情報を伝達する部位。情報は前の細胞から伝達物質として放出され、次の細胞に存在する受容体に結合する。 pict20051125001003