腎臓の傍糸球体装置は数種類の細胞で構成されていて、体液量や血圧の調節を行っています。本装置では、まず密集斑(マクラデンサ)細胞が尿細管腔液のNaCl濃度を検知して、その情報を隣接するメザンギウム細胞から輸入細動脈平滑筋細胞や顆粒細胞に伝達して、糸球体に流入する動脈血流量や顆粒細胞からのレニン分泌量の調節をしています。しかし、密集斑細胞におけるNaClセンサーや、その下流のシグナルの実体については永らく不明でした。今回、私達のグループはアラバマ大学及びモントリオール大学との国際的共同研究を行った結果、このNaClセンサーはATP透過性マキシアニオンチャネル(ATPチャネル)であり、下流シグナル分子はそこから放出されるATPであることを明らかにしました。本研究結果は、米国科学アカデミー紀要の2003年4月1日号に発表されました(Bell, Lapointe, Sabirov, Hayashi, Peti-Peterdi, Manabe, Kovacs & Okada 2003 PNAS 100, 4322-4327)。
最近のトピックス(10件)
- 175. 興奮性シナプスでの効率の高い神経伝達の分子メカニズムを捉える
- 174. 未成熟な精子が持つ「電気信号」の重要性を解明
- 173. 中年太りのメカニズム
- 172.母体ストレスが胎児の視床下部ストレス中枢に影響を与えるメカニズムの一端を解明
- 171. 心筋細胞内サルコメアのカオス的振動はカルシウム変動が引き起こす
- 170. 活動電位の速い立ち上がりを可能にする分子機構の手がかりを捉える
- 169.筋肉のバネ振動の波動特性─凹みの挙動が波動の性質を教えてくれる─
- 168. てんかん発作時の抑制性シナプスではアストロサイトの塩素イオン輸送体が神経細胞とは逆に発作を抑制する
- 167. 視交叉上核バソプレシン細胞が、他の視交叉上核細胞の概日リズム周期を決定
- 166.暑さと寒さから逃げるための脳の仕組みは異なる