127. 文脈学習によるCA1内領域特異的なシナプス多様化:AMPA受容体とGABAA受容体のopen channel数の増加

海馬CA1は文脈学習の成立に必要だが、左右半球の腹側から背側にかけて存在し、機能分担が見られる。Inhibitory avoidance taskによる文脈学習を行い、スライスパッチクランプ法で解析すると、CA1錐体細胞の興奮性や抑制性のシナプス入力は多様に強化され、その影響は細胞ごとに大きく異なる。本研究ではまず、学習依存的なシナプス可塑性を左右腹背側のCA14領域で検討した。学習による興奮性・抑制性のシナプス入力の多様化は、左右両側の背側CA1 neuronで確認され、左右の腹側CA1では見られなかった。Shannonの情報理論(1948)に基づき、興奮性と抑制性のシナプス多様性をエントロピー解析すると、学習により左右の背側CA1 neuronで情報拡大が確認されたのに対し、左右の腹側CA1 neuronでは確認されなかった。Nonstationary fluctuation analysisでは、左右両側の背側CA1 neuronでAMPA受容体とGABAA受容体の学習によるopen channel数増加が確認されたが、腹側CA1 neuronでは見られなかった。また、腹側のAMPA受容体single channel電流は背側より強く、腹側のGABAA受容体channel数は背側より多く、single channel levelでの領域差も新たに判明した。さらに両側の背側CA1に薬物を投与してAMPA受容体やGABAA受容体のシナプス移行を阻害すると学習は阻止されたが、腹側への投与では影響しなかった。以上、文脈学習の成立には左右の背側海馬CA1領域が重要であり、学習依存的なAMPA受容体やGABAA受容体のシナプス移行は文脈学習成立に必要である事が判った。また、情報理論に基づくシナプス多様性の定量化は、経験内容の評価や、処理過程の解明に役立つと考えられる。

Learning promotes subfield-synaptic diversity in hippocampal CA1. Sakimoto Y, Mizuno J, Kida H, Kamiya Y, Ono Y, Mitsushima D. Cerebral Cortex, in press 2019.

 

日トピックス2

<図の説明>

背側海馬CA1錐体細胞におけるpostsynaptic open channel数を解析した。文脈学習によりAMPA受容体Na+ channelやGABAA受容体Cl- channel数は増加するが、強化の度合いは細胞毎に大きく異なった。一方、腹側海馬のCA1錐体細胞で学習依存的な変化は見られないが、背側と比べてAMPA受容体のsingle channel電流が強く、GABAA受容体channel数が多いというCA1領域間のheterogeneityも新たに判明した。