杉山 清佳 (新潟大学大学院医歯学総合研究科)
Treitz靭帯の形態学的解析:上腸間膜動脈神経叢との関係
<2024年度 入澤彩記念女性生理学奨励賞(入澤彩賞)中堅枠 審査報告>
入澤彩賞中堅枠として、「学位取得後16年以上」で3年以上の正会員歴を有する生理学会会員を対象に募集を行ったところ、8名の応募者があった。申請者の研究分野に合わせ、男性4名、女性3名の審査員を選定し、総計7名にて選考委員会を形成した。
審査は主に、以下の3つの事項に分けて審査した。
1)独創的な研究であるか、研究業績は良好か。
2)ライフ・ワークバランスを上手に取って研究してきたか。
3)社会貢献、学会活動等社会に対する評価
これらの3項目に関して、各審査委員は、それぞれ100点満点で点を付けたうえで、(1)を50 %、(2)を30 %、(3)を20 %の比重にして総合点を算出し、それを基に総合順位を付けることにより評価した。同点になることも見据えて、一人一人に対する良い点や悪い点についても各候補において記述頂く事とした。また、審査を進めて行く中で、1名の応募者について、審査段階においてAPPW2025での演題登録が行われていないことが判明し、応募対象外となった。
審査員7名の評価を取りまとめた結果、新潟大学の杉山清佳氏が1位を4名の審査員から獲得し、総合点として2位の方との差は5点以内であったが、選考委員会の合議により、最も総合点が高く1位得票数の多い杉山清佳氏を受賞者として決定することについて、審査員全員が同意した。
杉山清佳氏は、発生期に脳を形成する分子が生後の脳にも発現することに興味を持ち、自身の研究テーマとして選び、脳形成に必須のホメオ蛋白質が、生後の視覚野の発達期(臨界期)を活性化することを発見、さらに、転写因子であるホメオ蛋白質が、経験に依存して脳内を移動する現象を初めて見つけ、世界的に注目された。それらの研究遂行時は妊娠期、子育て期に当たり、なおかつ、アメリカと日本をまたいで研究に邁進したことが審査員に高く評価された。
また、杉山氏は社会貢献活動を含む多角的な活動・独創的な研究業績、ワーク・ライフ・バランスの取り方など、審査基準の多くの点においても高く評価された。
今後も、審査基準については、「女性生理学者活動推進委員会」で事前に話し合い、より良い選考が出来るよう考慮していくつもりである。
2025年1月8日
女性生理学者活動推進研委員会
委員長 荒田 晶子