CONTENTS
- SCIENCE TOPICS - 心筋収縮系の再構築によるFrank-Starling 機構の解明 (照井貴子) P.75~
- SCIENCE TOPICS - 心筋α1 アドレナリン受容体刺激によるCa2+チャネルの制御メカニズムを解明 (大内仁) P.75~
- SCIENCE TOPICS - 神経細胞内Ca2+誘起性Ca2+放出の精緻な調節機構の発見 (秋田天平) P.75~
- HELLO PSJ - ニュージャージーで生理学者として「活躍」するには? (坂田秀三) P.78~
- OPINION - 日本解剖学会・日本生理学会による「基礎医学教育・研究」アンケート結果について P.81~
- AFTERNOON TEA - 竹内 崇 P.133~
- AFTERNOON TEA - 梁 楠 「ターニングポイント」 P.133~
- AFTERNOON TEA - 村田喜理 P.133~
- INFORMATION - 生理学研究所大学院説明会のご案内 (総合研究大学院大学生命科学研究科生理科学専攻) P.137~
- INFORMATION - 第51 回日本平滑筋学会総会の御案内 P.137~
- INFORMATION - International Symposium Post-genomic Advances in the Physiology of Smooth Muscle P.137~
- INFORMATION - 第4 回トランスポーター研究会年会 P.137~
- CALENDAR - 主な研究集会日程 P.140~
- ABSTRACTS - 第59 回西日本生理学会 P.141~
表紙の説明
第85 回日本生理学会大会(東京)
演題番号: 2P-F-006
演題: 「神経ステロイドDHEAS はSrc とNMDA 受容体機能の相互増強回路を介して海馬LTP 誘導を促進する」
“Neurosteroid DHEAS facilitates hippocampal LTP-induction via a recurrent potentiation between Src and NMDAR”
演者: 曽我部正博1,2, 陳玲2,3, 古家喜四夫2
所属: 1 名古屋大学大学院医学系研究科, 2JST, ICORP/SORST・細胞力覚, 3 南京医科大学
神経ステロイド Dehydroepiandrosterone-Sulfate (DHEAS) の脳内レベルは, 加齢に伴って低下する一方, 適量投与で学習記憶を促進する. しかし, その標的分子や作用機序は不明である. 我々は, DHEAS の慢性投与 (20mg/kg for 7 days) が, ラット海馬CA1 シナプスのテタヌス誘導性長期増強 (LTP) の刺激閾値を著しく低下させることを発見し, その分子機構を解析した. SD ラット脳スライスを電位感受性色素 (RH482,RH155) で染色し (A), シナプス終末電気活動 (PSFV), シナプス性グリア脱分極(SIGD), EPSP を同時記録するとともに (A), 錐体細胞のCa2+イメージングや生化学的分析を行った. DHEAS 投与群では通常LTP を誘導できない 100Hz30パルスの閾値下テタヌス刺激 (HFS) で充分なLTPが誘導された (B). DHEAS 投与群のPSFV やSIGD が変化しないこと,LTP 誘導促進は sigma 1 (σ1) 受容体のアンタゴニスト NE100 で完全に抑制されることから, DHEAS はシナプス後細胞のσ1 受容体に作用することが示唆された. また, DHEAS は σ1 受容体の下流で CA1 錐体細胞の NMDA 受容体依存性細胞内Ca2+上昇を促進し, その下流で HFS 依存的に Src(C) とERKの活性 (チロシン燐酸化) を増大させた. 逆にこのCa2+上昇はSrc 活性上昇(によるNMDA 受容体燐酸化)に依存した. この “NMDAr-Ca2+→Src→NMDAr-Ca2+” という相互促通回路の下流で生じるERK 依存的なAMPA 受容体の up-regulation が, LTP誘導を促進するものと思われた.