日本生理学雑誌 第70巻 11号

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表紙の説明

第85 回日本生理学会大会(東京)
演題番号:3P-F-028
演題:「換気量が中大脳動脈血流量に与える影響」
“Effect of ventilation on cerebral blood flow”
演者:林直亨1,小河繁彦2,Ainslie Philip3,宮本忠吉4
所属:九州大学・健康科学センター,2University of North Texas Health Science Center,3University of Otago,4 森ノ宮医療大学
安静時および運動時に動脈血分圧(PaCO2)と換気量(VE)が脳血流量に与える影響について検討した.  VE に対する脳血流量変化を調べるため,安静時および40W の自転車運動時においてVE を増減させた際の中大脳動脈血流速度(MCAV)を超音波ドップラー法にて計測した.  VE を増加させると,PaCO2 の指標となる呼気終末CO2 分圧(PETCO2)が低下し,それに伴いMCAV が減少した(グラフ赤線). 安静時に比べて運動時にはMCAV が増加し,この条件下でも同様の応答が観察された.  ただし,PETCO2 の変化に対するMCAV の感受性が運動中には増加し,またVE に対するMCAV の関係は上方へシフトしていた. これらの結果は,同一のPETCO2 であってもMCAV およびVE が安静時より運動時には増加することを示している.  活動筋で産生されたCO2 が脳内に蓄積しないよう,脳血流増加と換気高進によってより多くのCO2 をウォッシュアウトするような作用があることが示唆された.