日本生理学雑誌 第85号1号

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表紙の説明

〈表紙の図〉
大会名:第99回日本生理学会大会
演題番号:3P05-07
演題名:ミオシンATPase活性促進剤EMD57033がモルモットスキンド平滑筋弛緩過程に及ぼす影響
演題名(英語):Effects of EMD57033, an activator of the actomyosin ATPase activity, on the relaxation process of cell membrane permeabilized carotid artery and taenia cecum from guinea pig
演者:楢木康之,渡邉 賢
所属:東京都立大学 人間健康科学研究科
説明(キャプション):
ミオシンATPase活性促進剤EMD57033は心筋において,ミオシンモータードメインのアロステリックポケットに結合することでATPase活性を促進し,横紋筋収縮促進に働くことが知られているが,平滑筋収縮・弛緩過程における効果はまだ明らかになっていない.そこで,モルモット平滑筋をスキンド(脱膜化)処理した標本を用いて,Caイオン誘発性収縮後の弛緩過程におけるEMD57033の効果について検討した.図Aは頸動脈,図Bは盲腸紐のスキンド標本のCaイオン誘発性収縮後の弛緩経過を示している.頸動脈において,30μM以上のEMD57033はコントロール(DMSO)群と比較して有意に弛緩を抑制した.盲腸紐においては,100μMのEMD57033はDMSO群と比較して有意に弛緩を抑制した.平滑筋はクロスブリッジが素早く解離した後に一部が再結合し,その後ゆっくり解離すると考えると弛緩過程を説明することが可能であり,図Cの回帰式,図Dの模式図で表すことができる.図Cのτfast-detachはクロスブリッジの解離する時定数を,τslow-attachは解離したクロスブリッジが再結合する時定数を,τslow-detachは再結合したアクチン・ミオシンがゆっくりと解離する時定数を,Aはアクチン・ミオシンが再結合する割合をそれぞれ示している.今回の実験結果を図Cの回帰式を用いて回帰分析を行ったところ,頸動脈,盲腸紐ともに,EMD57033はτslow-detachを有意に延長していることから,EMD57033はアクチンとミオシンの再結合後の解離を抑制する可能性が示唆された.
利益相反の有無:なし