CONTENTS
- SERIES - 【第5回】日本生理学会100周年への想い ―国際交流の立場から―(久保義弘)
- INTRODUCTION - 【終身会員のご紹介】 佐藤 匡「生理学者としてのこれまでの歩み」、 桑木共之「日本生理学会でのこれまでの歩み」、 岩﨑信一「日本生理学会と私」
- SCIENCE TOPICS - オキシトシンが脂肪を燃焼させるための神経路 ~愛は脂肪を燃やす~(福島章紘,中村和弘)、 赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけを科学する ―背中スイッチではなかった―(大村菜美,Esposito G,黒田公美)、 上皮細胞でのカリウムイオンリサイクルに関わるイオンチャネル複合体が 生理条件下で常に開状態になる仕組みを解明(糟谷 豪,中條浩一)、 甲状腺ホルモンが小脳機能の発達に不可欠であることを発見 ―先天性甲状腺機能低下症による脳発達障害のメカニズムの 一端を解明―(二ノ宮彩音,細井延武,鯉淵典之)
- AFTERNOON TEA - 竹井 元「広がれ,ハムスターの輪!」、 木田裕之「プロ野球日本シリーズとそこから得られる教訓」、 瀬谷大貴「「伝統」と「革新」」
- MOURNING - 恩師 神野耕太郎先生を偲んで(廣田秋彦)
表紙の説明
〈表紙の図〉
大会名:第99回日本生理学会大会
演題番号:3P05-07
演題名:ミオシンATPase活性促進剤EMD57033がモルモットスキンド平滑筋弛緩過程に及ぼす影響
演題名(英語):Effects of EMD57033, an activator of the actomyosin ATPase activity, on the relaxation process of cell membrane permeabilized carotid artery and taenia cecum from guinea pig
演者:楢木康之,渡邉 賢
所属:東京都立大学 人間健康科学研究科
説明(キャプション):
ミオシンATPase活性促進剤EMD57033は心筋において,ミオシンモータードメインのアロステリックポケットに結合することでATPase活性を促進し,横紋筋収縮促進に働くことが知られているが,平滑筋収縮・弛緩過程における効果はまだ明らかになっていない.そこで,モルモット平滑筋をスキンド(脱膜化)処理した標本を用いて,Caイオン誘発性収縮後の弛緩過程におけるEMD57033の効果について検討した.図Aは頸動脈,図Bは盲腸紐のスキンド標本のCaイオン誘発性収縮後の弛緩経過を示している.頸動脈において,30μM以上のEMD57033はコントロール(DMSO)群と比較して有意に弛緩を抑制した.盲腸紐においては,100μMのEMD57033はDMSO群と比較して有意に弛緩を抑制した.平滑筋はクロスブリッジが素早く解離した後に一部が再結合し,その後ゆっくり解離すると考えると弛緩過程を説明することが可能であり,図Cの回帰式,図Dの模式図で表すことができる.図Cのτfast-detachはクロスブリッジの解離する時定数を,τslow-attachは解離したクロスブリッジが再結合する時定数を,τslow-detachは再結合したアクチン・ミオシンがゆっくりと解離する時定数を,Aはアクチン・ミオシンが再結合する割合をそれぞれ示している.今回の実験結果を図Cの回帰式を用いて回帰分析を行ったところ,頸動脈,盲腸紐ともに,EMD57033はτslow-detachを有意に延長していることから,EMD57033はアクチンとミオシンの再結合後の解離を抑制する可能性が示唆された.
利益相反の有無:なし