CONTENTS
- SCIENCE TOPICS - 心が体に作用する仕組み~心理ストレス反応の神経回路~(片岡直也,中村和弘)、快感は脳のどこで作られる?( 敬阳,桑木共之)、細胞周期の新しい制御機構の解明(平山真弓,富澤一仁)、D2 受容体はドーパミン一過性低下を検出し,誤った情動記憶を訂正する(飯野祐介,澤田 健,山口健治,河西春郎,柳下 祥)、腸管神経細胞で発現して消化管の逆蠕動を制御する遺伝子(藤井研介,小野富三人)、受容体の欠損で遅筋だけが運動神経の入力を受けるゼブラフィッシュは,· 軸索のつなぎ換えで素早い運動を可能にする.(善方文太郎,小野富三人)
- AWARD - 岡本洋介(第10 回 入澤宏・彩記念若手研究奨励賞(入澤記念若手賞))
- EDUCATION - 歴史をふり返る:実験の方法と面白さ(小山なつ)
- AFTERNOON TEA - 西谷(中村)友重「変化を楽しむ」、織田善晃、小笠原準悦「COVID-19 の終息を願って」
表紙の説明
大会名:第96回日本生理学学会大会/9th FAOPS congress
演題番号:2P-047
演題名:ラット肺静脈におけるカテコラミン誘発性不整脈の分子基盤
演題名(英語):Molecular architecture of catecholamine-induced arrhythmogenicity in rat pulmonary vein
演者:岡本洋介1,ナイン イェイ アウン2,永澤悦伸3,高木大地1,尾野恭一1
所属:1秋田大学大学院医学系研究科細胞生理学講座,2山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所,3東邦大学薬学部薬物治療学研究室
説明(キャプション):
肺静脈は心房細動という不整脈の発生源として知られている.実際に,ラットの肺静脈では,ノルエピネフリン(NE)投与で活動電位を伴った異所性興奮が生じる.我々は,ラットを用いて,肺静脈が不整脈を起こす分子メカニズムの解明を試みた.
A:ラット単離肺静脈心筋細胞における,NE 10μM投与で生じるCa2+依存型誘発自動能.パッチクランプ法による活動電位記録とIndo-1を使ったレシオ式細胞内Ca2+測定を同時に行った.J. Mol. Cell. Cardiol.の許可を得て転載.
B:ラット肺静脈心筋細胞における過分極活性型Cl-電流.細胞内Cl-濃度を増加させると電流の振幅が大きくなり,時間動態が早くなった.パルスプロトコルは挿入図の通り.J. Mol. Cell. Cardiol.の許可を得て転載.
C:ラット肺静脈心筋細胞における細胞免疫染色.細胞表面上のNa-Ca交換体(NCX1,緑)が細胞内のIP3受容体(IP3R2,赤)と共局在していることが分かった.NEがIP3R2からのCa2+放出を活性化し,上昇したCa2+がNCX1のフォワードモードを駆動して,脱分極・活動電位が発動していると考えられた.J. Mol. Cell. Cardiol.の許可を得て転載.
D:免疫沈降-質量分析の結果,ラット心臓ではヒートショック蛋白の一つであるHSPA8が,過分極活性型Cl-チャネルであるCLCN2の結合パートナーであると判明している.ラット肺静脈心筋細胞面上で,HSPA8(緑)がNa/K pump(赤)と共局在していた.J. Biol. Chem.の許可を得て転載.
E:CLCN2とHSPA8のドッキングシミュレーション.静電ポテンシャルの高い部分(点線内の濃い青)が両蛋白の結合部位.HSPA8はホモ2量体であるCLCN2の両サブユニットにまたがって結合し,CLCN2の共通ゲートを安定化させていると考えられた.CLCN2-HSPA8チャネル電流が脱分極を促進している可能性が示唆された.J. Biol. Chem.の許可を得て転載.
利益相反の有無:なし