日本生理学雑誌 第61巻 JJP号

表紙の説明

noimage

IN JJP: JJP和文要旨 vol 49 no 1 [

情動と系統発生

  • Emotion and Philogeny
  • M. Cabanac(Dept. Physiol., Fac. of Med., Laval Univ.)

情動性発熱,情動性頻脈という生理現象を指標として哺乳動物(ラット,マウス),爬虫類(イグアナ),両生類(カエル),魚類(フナ)での実験結果の考察 から動物の行動決定さらに,進化の過程においても重要な要因と考えられる情動が系統発生的には両生類と爬虫類の間に発現したと考えられた.[Review pp. 1-10] [English abstract]

短周期明暗サイクルのマスキングおよびパラメトリック効果

  • Masking and Parametric Effects of High-Frequency Light-Dark Cycles
  • ユルゲン・アショフ(マックス・プランク行動生理学研)

短周期明暗サイクルを用いることにより,行動リズムに対する光のマスキング作用を押さえ,光とサーカディアンリズムの解析を可能にした.その結果,光のパラメトリック作用がリズム同調に関与していることが明らかとなった.[Review pp. 11-18] [English abstract]

蛍光濃度消光測定法による pH 依存的なシナプトソーム膜融合

  • H-Dependent Fusion of Synaptosomal Membrane Studied by Fluorescence Quenching Method
  • 熊丸絵美,佐藤雅之,吉田博子,葛西道生,井出 徹1(大阪大院基礎工学研,1科学技術振興事業団一分子過程プロジェクト)

シナプスにおける pH 降下により起こる膜融合について蛍光エネルギー移動を原理とした脂質混合法で調べた.DIDS, SITS, glibenclamide といった Cl チャネル特異的な薬剤の効果からこの膜融合には Cl チャネルが関わっていることが示唆された.[Regular paper pp. 19-25] [English abstract]

ウシ血清アルブミンの溶液とゲル状態における SH 基微環境: ベクトル電子常磁性共鳴法による解析

  • Investigation of Slow Dynamics of the Sulfhydryl in the Solution and Gel States of Bovine Serum Albumin: A Vector Electron Paramagnetic Resonance Study
  • 林 知也,下山雄平1,桑田一夫,惠良聖一(岐阜大医第2生理,1北海道教育大函館校物理)

ベクトル EPR 法を用いて,BSA の溶液とゲル状態での,BSA 分子内のフリーの SH 基の微環境について研究した.ゲル状態において,SH 基に結合したスピンラベルの回転運動はかなり遅くなるが,SH 基を取り囲む分子クレバスの大きさはほとんど変化しないことが明らかになった.[Regular paper pp. 27-33] [English abstract]

牛副腎髄質細胞内に流入した Ca2+ のミトコンドリアへのとりこみと Na+/Ca2+ 交換機構によるミトコンドリアからの Ca2+ 流出

  • Sequestration of Depolarization-Induced Ca2+ Loads by Mitochondria and Ca2+ Efflux via Mitochondrial Na+/Ca2+ Exchanger in Bovine Adrenal Chromaffin Cells
  • 反町 勝,西村茂人,山神和比己(鹿児島大医第一生理)

牛副腎髄質細胞内 Ca2+ 濃度調節におけるミトコンドリアの役割およびミトコンドリアからの Ca2+ 流出機構を fura-2 顕微測光法を用いて検討した.細胞内に流入した Ca2+ はミトコンドリアにいったん取り込まれた後,Na+/Ca2+ 交換輸送系により細胞質に流出されると結論された.[Regular paper pp. 35-46] [English abstract]

運動鍛練ラットの急性温熱負荷に対する体温調節反応

  • Thermoregulatory Responses to Acute Heat Loads in Rats Following Spontaneous Running
  • 杉本直俊,紫藤 治,桜田惣太郎,永坂鉄夫(金沢大医生理学第一)

自発的運動鍛練したラットに体内に植え込んだヒーターまたは気温を上昇させる方法で,体内外から急性温熱負荷を加えたところ,体内からの負荷のみ非蒸散性熱放射反応が亢進し,体温の上昇が抑制される.また,3H-glibenclamide を用いたオートラジオグラフィーから 30k タンパクの膜融合への関与が予想される.[Regular paper pp. 47-53] [English abstract]

ウサギ脳底動脈平滑筋の収縮ならびにカルシウム動態に及ぼす pH の影響

  • Effects of pH on Contraction and Ca2+ Mobilization in Vascular Smooth Muscles of the Rabbit Basilar Artery
  • 青山泰明1,2,植田圭吾1,2,瀬戸川亜希子1,河合康明1(1鳥取大医第二生理・2附属脳幹性疾患研脳神経内科)

摘出ウサギ脳底動脈を用いてセロトニンに対する収縮反応ならびにカルシウム動態に及ぼす pH 変化の影響を検討した.pH の変化は,細胞内カルシウム動態を変化させることにより,発生張力を修飾することが示唆された.[Regular paper pp. 55-62] [English abstract]

自転車競技訓練者と非訓練者における乳酸蓄積閾値と心拍数 175 から決定される運動パラメーターの比較

  • Physiological Parameters Determined at OBLA vs. a Fixed Heart Rate of 175 beats・min−1 in an Incremental Test Performed by Amateur and Professional Cyclists
  • Jose L. Chicharro1,2,Alfredo Carvajal1,Javier Pardo1,Margarita Perez3,Alejandro Lucia3(1Universidad Complutense, Madrid; 2Centro Nacional de Investigacion y Ciencias del Deporte, Consejo Superior de Deportes, Madrid; 3Departamento de Ciencias Morfologicas y Fisiologia, Universidad Europea de Madrid)

運動訓練の効果は,運動時心拍数 175 回/分 (HR175),あるいは血中乳酸蓄積開始閾値 (OBLA, 4 mM) に達する仕事量・酸素摂取量で検討されている.本論文では,HR175 あるいは OBLA と仕事量・酸素摂取量の関係を運動非訓練者とプロ自転車競技者で比較し,訓練によってこの関係が異なることを見出した.[Regular paper pp. 63-69] [English abstract]

ラット膵島のぶどう糖刺激による [Ca2]i 上昇における Na+/Ca2+ exchanger の寄与

  • Contribution of Na+/Ca2+ Exchanger to Glucose-Induced [Ca2+]i Increase in Rat Pancreatic Islets
  • 古橋一隆,葉原芳昭(北大院獣医学比較形態機能生理学)

ラット膵島のぶどう糖による [Ca2+]i 上昇における Na+/Ca2+ exchanger の役割を明らかにするために選択的阻害薬である KB-R7943 を用いた.これによって [Ca2+]i の上昇の二相目が部分的に抑制された.したがって Na+/Ca2+ exchanger を介した Ca2+ 流入がその [Ca2+]i 上昇に部分的に寄与していると考えられる.[Regular paper pp. 71-80] [English abstract]

 

サイクリックAMP依存性タンパク質リン酸化酵素による骨格筋トライアッドからの脱分極誘発性カルシウム放出の制御

  • Regulation of Depolarization-Induced Calcium Release from Skeletal Muscle Triads by Cyclic AMP-Dependent Protein Kinase
  • 伊神 恒,山口直宏,葛西道生(大阪大院基礎工学研究科生物工学分野)

内在性 PKA により骨格筋トライアッドからの脱分極誘発性 Ca2+ 放出は活性化されたが,カフェインによる Ca2+ 放出は活性化されなかった.よって,内在性 PKA でリン酸化される蛋白質は生理的 Ca2+ 動員に寄与する制御因子であると考えられる.[Regular paper pp. 81-87] [English abstract]

麻酔下ネコでの吸入プロスタサイクリン (PGI2) と一酸化窒素 (NO) および両者の併用に対する肺小血管の拡張応答

  • Pulmonary Microvascular Responses to Inhaled Prostacyclin, Nitric Oxide, and Their Combination in Anesthetized Cats
  • 池田宗一郎1,2,白井幹康1,下内章人1,Kyong-Yob Min2,大澤仲昭2,二宮石雄3(1国立循環器病センター研究所心臓生理部・循環動態部,2大阪医大第一内科,3広島国際大保健医療部臨床工学科)

PGI2 エアゾルと NO 吸入は,主に内径100-900 micrometer の肺小動脈を局所性に拡張させた.両者の併用は増強効果を示し,papaverine 静注と同程度の拡張をおこした.また PGI2 による拡張は,L-NAME 前処置の影響を受けなかった事より,この応答には内因性 NO は関与しない事が示唆された.[Regular paper pp. 89-98] [English abstract]

モルモット鼻粘膜イオン輸送の特性及びメサコリンが与える影響

  • Effect of Ion Transport Inhibitors and Methacholine on Short-Circuit Current of Isolated Guinea Pig Nasal Epithelium
  • 鈴木一雅,河原克雅2,寺田修久,野村知弘,今野昭義,福田康一郎1(千葉大学医学部耳鼻咽喉科,1千葉大学医学部第 2 生理,2北里大学医学部生理学)

モルモット鼻粘膜上皮細胞におけるイオン輸送機構とメサコリンによる分泌機序を,Ussing chamber 法を用いて検討した.経上皮粘膜短絡電流は Na+ 吸収と Cl− 分泌によって発生,メサコリンによる短絡電流増加反応は主に Cl− 分泌によると考えられた.[Regular paper pp. 99-106] [English abstract]

細胞の基質分子への接着は加圧により抑制される

  • Cell-Substratum Adhesion Is Suppressed by High Pressure
  • 橋口隆志,山口武夫,寺田成之(福岡大理学部化学)

チャイニーズハムスター細胞の基質分子への接着は加圧 (60−80 MPa) により抑制された.抑制の原因として,加圧によるインテグリンと接着斑形成に関与しているタンパク質との相互作用の異常が示唆された.[Regular paper pp. 107-112] [English abstract]

エンドセリン-1 はプロテインキナーゼ C の活性化を介して低下した赤血球変形能を改善する

  • Endothelin-1 Improves the Impaired Filterability of Red Blood Cells through the Activation of Protein Kinase C
  • 坂下可奈子,大西忠博,石岡憲昭1,上坂伸宏2(NTT 関東逓信病院医科学研,1宇宙開発事業団筑波センター,2日本医大第一生理)

赤血球膜におけるプロテインキナーゼ C の活性増加はメカニカルストレスによって低下した赤血球変形能を改善した.エンドセリン-1 は赤血球膜の PKC 活性を増加させて,低下した赤血球変形能を改善した.[Regular paper pp. 113-120] [English abstract]

ドプラー法とプレチスモグラフィー法による麻酔下ラットの尾血流量の比較

  • Comparison between Tail Skin Blood Flow Measurements by Ultrasonic Doppler Flowmetry and Plethysmography during Heating in Anesthetized Rats
  • 中嶋康文,能勢 博2,鷹股 亮1(京都府立医大麻酔学・1第一生理,2信州大医スポーツ医学)

暑熱環境下の麻酔下ラットの尾血流をドップラー法 (TBFu) とプレチスモグラフィー法 (TBFp, tissue) を同時に使い測定した.TBFp, tissue を絶対値化 (TBFp) するため,ラットの尾を円錐型と仮定して堆積を求めた.そして,TBFp − 0.7 TBFu + 0.1 (r2 − 0.94, p < 0.001) という直線回帰式が得られた.今後の研究にこの式が有用であると考えられる.[Technical note pp. 121-124] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 49 no 2 [

興奮過程に伴い神経繊維および神経細胞内に誘起される急速な構造変化

  • Rapid structural changes in nerve fibers and cells associated with their excitation processes
  • Ichiji Tasaki (NIH, USA)

有髄神経における跳躍伝導の発見者として名高い田崎一二博士がご自身で最新の微小変位測定法を駆使して検出された神経興奮時における細胞質構造変化の意義を総説されたもの. [Review pp. 125-138] [English abstract]

 

高強度運動負荷時および負荷後の二酸化炭素過剰排出動態

  • Kinetics of excess CO2 output during and after intensive exercise
  • 柚木 孝敬 (北海道大学高等教育機能開発総合センター)

高強度運動負荷時の乳酸生成は,負荷終了後に CO2 の過剰排出をもたらした.また,負荷終了時には, ETCO2 が安静時以下に低下した.この結果は,CO2 過剰排出量は乳酸の増加と関係するが,過換気にも影響されることを示唆する. [Regular paper pp. 139-144] [English abstract]

 

フェレット右室乳頭筋の等尺性収縮張力曲線のハイブリッド・ロジスティック特性

  • Hybrid logistic characterization of isometric twitch force curve of isolated ferret right ventricular papillary muscle
  • 水野 樹1,2,実金 健1,荒木 淳一1,畑島 峰子3,森反 俊幸3,石川 哲也4,小武海 公明4,栗原 敏4,平川 方久2,菅 弘之1 (岡山大学医学部 1生理学第二講座・2麻酔・蘇生学講座,3鈴鹿医療科学大学医用工学部医用電子工学科,4東京慈恵会医科大学医学部生理学講座第二)

摘出表面潅流フェレット乳頭筋の等尺性収縮張力波形が、筋長やカルシウム濃度にかかわらず,二つのロジスティック関数の差として表されることを証明した.これはクロスブリッジ運動の統合的表現として興味ある知見である. [Regular paper pp. 145-158] [English abstract]

 

ビタミン C および E の高所のヒト局所寒冷刺激に対する末梢血管反応修飾に対する効果

  • Effect of vitamin C and E in modulating peripheral vascular response to local cold stimulus in man at high altitude
  • S.S. Purkayastha,R.P. Sharma,G. Ilavazhagan,K. Sridharan,S. Ranganathan,W. Selvamurthy (Defence Institute of Physilogy & Allied Sciences,India)

高度 3700 m における男性被験者の減弱寒冷末梢血管拡張反応をビタミン C (500 mg/日) およびビタミン E (400 mg/日) 投与が改善した,最大効果はビタミン C によって得られ,ビタミン C と E の同時投与は相加効果を示さなかった.従ってビタミン C が高所での末梢寒冷障害の改善に有効である. [Regular paper pp. 159-167] [English abstract]

 

Power-duration curve を規定する一定値パラメータ W’ に及ぼすクレアチン経口投与の影響

  • The effect of oral creatine supplementation on the curvature constant parameter of the power-duration curve for cycle ergometry in humans
  • 三浦 朗,木野 扶美子,梶尾 さおり,佐藤 広徳1,佐藤 陽彦2,福場 良之 (広島女子大学生活科学部,1広島工業大学,2九州芸術工科大学)

本研究では,クレアチンの経口投与が,脚の自転車運動における発揮パワー (P) と運動継続時間 (t) の関係 (直角双曲線関係 [(P − θF)・t = W’]) に影響を及ぼすか否かを検討した.結果として,クレアチン投与によって,θF に変化は見られなかったが,W’ は有意に増加した. [Regular paper pp. 169-174] [English abstract]

 

ブタ冠動脈におけるエンドセリン-1 による収縮増強作用へのプロテインキナーゼ C-δの関与について

  • Contractile potentiation by endothelin-1 involves protein kinase C-δ activity in porcine coronary artery
  • 中山 貢一,畑 信三,佐藤 桂,小出 昌代,石井 邦雄,中山 貢一 (静岡県立医科大学薬学部)

ブタ冠動脈において 4 種類のプロテインキナーゼ C (PKC) のアイソフォーム PKCα,PKCβ1,PKCδおよび PKCζの存在が確認され,それらのうちエンドセリン-1 による収縮増強作用には PKCζが関与することが示唆された. [Regular paper pp. 175-183] [English abstract]

 

ノルアドレナリン,アドレナリン,ヴァゾプレッシン,アンジオテンシンの静脈注入による無麻酔下ラットの局所血流抵抗の変化

  • Regional hemodynamic responses to exogenous catecholamines and vasoactive peptides in conscious rats
  • 竹本 裕美 (広島大学医学部)

種々状況下において中枢性に血中に放出されて昇圧性に作用する可能性のある 4 種類の物質を静脈注入して,用量と 5 箇所の局所血流抵抗反応の関係を明らかにした.すべての血管床が同様に反応するわけではない. [Regular paper pp. 185-191] [English abstract]

 

運動鍛練者の寒冷暴露による尿中ナトリウム排出量の抑制

  • Attenuation of urinary sodium excretion during cold air exposure in trained athletes
  • 芳田 哲也,永島 計,中井 誠一,寄本 明,河端 隆志,森本 武利 (京都府立医科大学)

運動鍛練者と非鍛練者と対象に寒冷暴露による尿中ナトリウム排出量 (UNaV) の変化を比較した.非鍛練者の UNaV は寒冷暴露時に増加したが,運動鍛練者の UNaV 増加は認められず,運動鍛練による体液調整系の変化が示唆された. [Regular paper pp. 193-199] [English abstract]

 

ラット腎髄質内層集合管細胞の側底型 Na/K/2Cl 輸送体の誘導におけるバゾプレッシンと高浸透圧刺激の有効性

  • Roles of vasopressin and hypertonicity in basolateral Na/K/2Cl cotransporter expression in rat kidney inner medullary collecting duct cells
  • 安西 尚彦,泉田 いぶき1,小林 豊1,河原 克雅 (北里大学医学部 生理・1内科)

側底型 Na/K/2Cl 輸送体 (rNKCC1) の発現誘導を,ラット培養腎髄質内層集合管細胞において調べた.高浸透圧刺激 (500 mOsm/kgH2O) は,rNKCC1 を mRNA と蛋白のレベルで増加させたが,バゾプレッシン (10−8 M) は一過性の rNKCC1 mRNA 増加のみ誘導した. [Short communication pp. 201-206] [English abstract]

 

中型実験動物用の完全自動化した間欠的低酸素曝露環境装置の開発

  • A fully-automated environmental chamber for examination of long-term effects of intermittent hypoxia on medium-size animals
  • Xavier Chaufour,Faiq G. Issa,Colin Sullivan,Craig McLachlan,Gunnar Unger (University of Sydney, Australia)

ウサギなどの中型動物 4 匹を同時に低酸素環境に曝露する安価な環境装置を開発した.この装置を用いると,動物を飼育しながら低酸素環境 (12−13% O2) に自動的かつ間欠的に長期間曝露することが可能である. [Technical paper pp. 207-211] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 49 no 3 [

急性低酸素時の頸動脈小体化学感受機序におけるイオンチャネルの役割

  • Roles of ion channels in carotid body chemotransmission of acute hypoxia
  • Machiko Shirahata1,2,James S.K. Sham1,3 (Departments of 1Environmental Health Sciences,2Anesthesiology/Critical Care Medicine,3Medicine, The Johns Hopkins University, USA)

頸動脈小体化学受容器における低酸素感受機序をイオンチャネルレベルで 解析した最近の研究成果をまとめた優れた総説である,特に動物種差に焦点をおき,酸素感受性K+ チャネルによる glomus cell の脱分極はウサギに特異的であり,他の動物種では別の K+ チャネルやレセプターがより重要であることを明らかにしている. [Review pp. 213-228] [English abstract]

統合生物学より見た冠微小循環

  • Integrative physiology of coronary microcirculation
  • 梶谷 文彦,後藤 真己 (川崎医科大学)

冠循環,特に比較的深い心筋内血行動態の特徴は,心筋収縮が絶えず繰り返されるた めに酸素需要が高いにもかかわらず,心筋収縮に伴うメカニカルストレスも関与して ,他臓器の循環に比較して収縮期抵抗が高く,ほぼ拡張期のみに流れが制限されるこ とである.このような心筋流入血流の不利な条件を克服するため,冠循環は個々の心 筋細胞近傍の毛細血管まで血流を保つことが出来るようによく発達した微小血流路が 構築されている. [Review pp. 229-241] [English abstract]

メダカ初期胚における胞胚腔内等張性外液形成に関与する二種の外液塩素イオン依存性塩素イオンチャネルおよび伸張受容性陽イオンチャネル

  • Two types of external Cl−-dependent Cl− channels and one type of stretch receptor cation channel contribute to formation of isotonic blastocoel fluid in early medaka fish embryo
  • 重本 尚 (神戸大学医学部第二生理学教室)

淡水中で発生するメダカ胞胚腔内には等張性の外液が分泌され初期胚細胞に新たな外環境を与える.この分泌には,相反的に外液の塩素イオン感受性を有する 2 種の新規な塩素イオンチャネルが関与することを示し,かつそのチャネルの性質を明らかにした. [Regular paper pp. 243-255] [English abstract]

シアン酸塩の投与によりヘモグロビンの酸素親和性が増加したラットにおける循環,代謝系の低酸素耐性の増大

  • Increased cardiovascular and metabolic tolerance to acute hypoxia in the rat with increased hemoglobin-O2 affinity induced by Na-cyanate treatment
  • 滝 潤一郎1,2,増田 善昭1,林 文明2,福田 康一郎2 (千葉大学医学部 1第三内科・2第二生理)

シアン酸塩投与による低酸素耐性増加の機序をラットを用いて検討した.ヘモグロビンの酸素親和性の増加,代謝率の低下,一回心拍出量の増加と心拍数の変化,低酸素負荷時の循環機能低下の軽減,および心筋と延髄の毛細血管密度の増加が原因と考えられた. [Regular paper pp. 257-265] [English abstract]

モルモット大動脈における内皮細胞依存性弛緩の 18βグリシルレチノ酸による抑制

  • Inhibition of the endothelium-dependent relaxation by 18β-glycyrrhetinic acid in the guinea-pig aorta
  • 福田 裕康,越田 信,山本 喜通,鈴木 光 (名古屋市立大学医学部生理学第一)

モルモット大動脈輪状平滑筋標本において,サブスタンス P により誘発される内皮細胞依存性弛緩に及ぼすギャップ結合抑制薬 18βグリシルレチノ酸 (GA) の効果を調べた.GA は内皮細胞依存性弛緩のうち,主に EDHF による弛緩を抑制すると考えられた.GA はまたノルアドレナリンや高カリウムイオンによる収縮や K チャネル開口薬による弛緩も変化させた.GA の作用とギャップ結合の抑制との関係について考察した. [Regular paper pp. 267-274] [English abstract]

運動による心拍の自己フィードバック制御

  • Self-biofeedback control of heart rate with exercise
  • 佐田 孝治,浜田 真悟1,米沢 良治2,二宮 石雄3 (社会保険下関厚生病院循環器科・1ME 室,2広島工業大学工学部電気工学科,3広島国際大学臨床工学科)

新たに作成した心拍制御装置を使用して,患者自身で運動負量を調節することにより,過剰な心拍応答を阻止し一定の心拍を維持する新しい心臓のトレーニング方法を開発した.本法を健常者に応用したところ,走行速度を変化させて心拍数を設定値に維持できることがわかった. [Regular paper pp. 275-281] [English abstract]

乳酸の心外膜投与による直腸運動反応の神経性機序

  • The neural mechanism of rectal motility response induced by epicardial application of lactic acid
  • J. Koley,A.K. Basak1,M. Das,M.Z. Haque,B.N. Koley2 (Department of Physiology, Electrophysilogy Unit, University College of Science, India,1Department of Physiology, Nepalgunj Medical College, Nepal,2Department of Phsysiology, College of Medical Sciences, Nepal)

麻酔ネコで乳酸を心外膜に与えると,直腸の運動は反射性に2相性の反応を示す.この反応は心臓の交感神経切除および仙髄の前根切除で消失する,この反応の 求心路は心臓交感神経であり,遠心路は骨盤神経である.反射中枢は四丘体より上位にある.2相性反応のうち直腸の弛緩と収縮はそれぞれ NO とアセチルコリンによって起こる. [Regular paper pp. 283-288] [English abstract]

ラット大脳皮質体性感覚野の興奮と局所脳血流量変化

  • CBF change evoked by somatosensory activation measured by laser-Doppler flowmetry: Independent evaluation of RBC velocity and RBC concentration
  • 松浦 哲也,藤田 英明,関 千江,柏倉 健一,山田 勝也1,菅野 巌2 (JST 秋田,1秋田大医学部,2秋田脳研)

ラット大脳皮膚興奮時の局所血流動態をレーザードップラ血流計で測定し,計測部位における誘発電位を記録した.血流増加量は皮質活動の大きさにほぼ比例し,刺激開始後約 0.5 秒で立ち上がった.血球速度及び容積の立ち上がりに有意差は認められなかった. [Regular paper pp. 289-296] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 49 no 4 [

自律的神経-内分泌性制御交換器としての体温調節

  • Thermoregulation as a switchboard of autonomic nervous and endocrine control
  • Eckhart Simon (Department of Physiology, Max-Planck-Institute for Physiological, and Clinical Research, W.G. Kerckhoff-Institute, Germany)

心血管系,免疫系機能の交感神経性調節,エネルギ−平衡のホルモン性調節,塩類体液平衡の神経内分泌性調節と体温調節系との相互関係について,最近の神経生理学,神経組織学,遺伝子欠損モデルなどからの成果を中心に考察した. [Review pp. 297-323] [English abstract]

骨格筋興奮収縮連関の分子機構

  • Molecular aspects of excitation-contraction coupling in skeletal muscle
  • 飯野 正光 (東京大学大学院医学系研究科)

骨格筋細胞の脱分極に続き,筋小胞体からカルシウムが放出され収縮を引き起こす.この際,ジヒドロピリジン受容体が膜電位センサーとして,リアノジン受容体がカルシウム放出チャネルとして働く.この分子機構が解明されつつある. [Review pp. 325-333] [English abstract]

ラット顎下腺腺房細胞のカルバコール誘発クロライド電流および水分泌に及ぼすイソプロテレノールの影響

  • Modulation of carbachol-induced Cl− currents and fluid secretion by isoproterenol in rat submandibular acinar cells
  • 田中 秀司,柴 芳樹,中本 哲自1,杉田 誠,広野 力 (広島大学歯学部口腔生理学講座・1歯科補綴学講座)

イソプロテレノール (IPR) は, カルバコール (CCh) 刺激時のラット潅流顎下腺からの水分泌と,分離細胞での CCh による振動性 Cl− 電流を抑制し, 非振動性 Cl− 電流を増強した,IPR による水分泌抑制での,振動性 Cl− 電流抑制の関与が示唆された. [Regular paper pp. 335-343] [English abstract]

絶食・再摂食時の褐色脂肪組織 (BAT) 熱産生と膜リン脂質脂肪酸組成の変化

  • In vitro thermogenesis and phospholipid fatty acid composition of brown adipose tissue in fasted and refed rats
  • シャハ シャマル クマル,大野都 美恵1,大日向 浩,黒島 晨汎 (旭川医科大学生理学第一講座,1北海道教育大学旭川校健康福祉コース)

72 時間絶食により,in vitro BAT 酸素消費量が低下し,摂食で回復した.絶食は BAT リン脂質のドコサヘキサエン酸を減少させ,再摂食は回復させた.両者の間に正の相関があり,ドコサヘキサエン酸が BAT 熱産生に関係することが推測された. [Regular paper pp. 345-352] [English abstract]

膵臓のβ-細胞における spike-burst の発生と Ca2+ 濃度の振動に関するシミュレーション

  • Simulation of spike-burst generation and Ca2+ oscillation in pancreatic β-cells
  • 三輪 嘉尚,今井 雄介1 (京都大学大学院薬学研究科,1大阪医科大学第一生理学教室)

膵臓のβ-細胞における spike-burst の発生と Ca2+ 濃度の振動現象について,Na-Ca 交換ポンプと Na-K 能動輸送との協奏的な働きによる Ca2+ の排出過程がこれらの現象の重要な担い手となるとする新たなモデルを仮定し,シミュレーションを行った. [Regular paper pp. 353-364] [English abstract]

ラット胃酸分泌細胞基底側膜におけるプロスタグランジン E2 で活性化されるハウスキーピング Cl− チャネル

  • Prostaglandin E2-activated housekeeping Cl− channels in the basolateral membrane of rat gastric parietal cells
  • 五十里 彰,酒井 秀紀,田中 亜貴子,池田 敦,井上 華奈子,竹口 紀晃 (富山医科薬科大学薬学部薬物生理学)

ラット単離胃酸分泌細胞の基底側膜に,プロスタグランジン E2 で (EP3 レセプターを介して) 活性化され Cl− チャネル (約 0.3 pS) が存在することを明らかにした.この活性化機構には細胞内 Ca2+ 濃度上昇が関与していた. [Regular paper pp. 365-372] [English abstract]

ネコの片腎摘出後に見られる腎肥大に与える除神経の影響

  • Effect of renal denervation on the compensatory renal growth following nephrectomy in the cat
  • 和田 哲也,松川 寛二,村田 潤,松本 睦子1,中島 一恵 (広島大学医学部保健学科,1広島国際大学)

ネコを用いて除神経の腎重量に与える影響を対照時および腎摘出後に検討した.腎神経は対照時の腎重量維持に関与していた.一方,片腎摘出後の対側腎臓の代償性肥大は腎神経以外の要因により起こることが示唆された. [Regular paper pp. 373-377] [English abstract]

全血の曲線と同等な赤血球酸素解離曲線の自動測定

  • Automatic measurement of the red cell oxygen dissociation curve identical with the whole blood curve
  • アブドル・ハッサン・モハメド-マウジュド,今井 清博 (大阪大学大学院医学系研究科情報生理学講座)

酸素電極法と分光測光法を組み合わせて完全なヘモグロビンの酸素解離曲線を自動記録する Imai 型装置に,光散乱のノイズを軽減するための積分球を設け,検出光波長や緩衝液システムの最適条件を検討して,赤血球浮遊液から全血と同等の酸素解離曲線を 得る方法を開発した. [Regular paper pp. 379-387] [English abstract]

モルモット心室筋に対する一酸化窒素発生剤 NOC7 の二相性の変力作用

  • Biphasic nature of inotropic action of nitric oxide donor NOC7 in guinea-pig ventricular fiber
  • 大場 三榮,河田 溥 (福岡大学医学部生理学第二)

一酸化窒素がその濃度に応じて心室筋の単収縮力を二相性に変化させた.この作用は筋原線維の Ca2+ 感受性や筋小胞体機能の変化によるものではないことをβ-escin 処理スキンド線維を用いて示した. [Regular paper pp. 389-394] [English abstract]

唾液乳酸濃度による最大乳酸平衡濃度の測定

  • Determination of the maximum steady state of lactate (MLSS) in saliva: an alternative to blood lactate determination
  • (Departamento de Ciencias Morfologicas y Fisiologia, Universidad de Madrid, Spain, Margarita Perez,Alejandro Lucia,Alfredo Carvajal1,Javier Pardo1,Jose J. Chicharro21Escuela de Medicina Deportiva, Universidad Complutense de Madrid, Spain,2Escuela de Enfermeria, Fisioterapia y Podologia, Universidad Complutense de Madrid, Spain)

唾液乳酸濃度が血中乳酸濃度と平行して上昇することより,運動負荷時の唾液乳酸濃度変化の閾値を求め,この閾値が 0.8 mM であることを明らかにした.また運動時の血中最大乳酸濃度の平衡値を唾液乳酸濃度から推定する可能性を示した. [Regular paper pp. 395-400] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 49 no 5 [

インターバルトレーニングが高強度運動中の動脈血酸素不飽和と換気に及ぼす影響

  • Effects of maximal interval training on arterial oxygen desaturation and ventilation during heavy exercise
  • 宮地元彦,片山敬章* (川崎医療福祉大学・健康体育学科,*名古屋大学大学院)

12 週間のインターバルトトレーニングによって誘発される高強度運動中の動脈血酸素不飽和には,トレーニング初期では過換気抑制が重要な発現因子である が,トレーニングが進行し最大酸素摂取量が増加すると過換気抑制以外の因子 (例えば肺胞 – 動脈血酸素較差の開大) が重要となることが示唆された. [Regular paper pp. 401-407] [English abstract]

Protein kinase C inhibitors abolish the increased resistance of diabetic rat heart to ischemia-reperfusion injury

  • Chang-Hyun Moon (Department of Physiology School of Medicine, Ajou University)

[Regular paper pp. 409-415] [English abstract]

バーチャルリアリティ装置応用の視覚刺激によるヒトの姿勢制御解析

  • Postural adjustment response to depth direction moving patterns produced by virtual reality graphics
  • 久野慎介1,3,川上哲也1,3,川上 治2,3,三宅養三1,渡邊 悟3 (1名古屋大学医学部眼科・2神経内科,3藤田保健衛生大学衛生学部生理学)

[Regular paper pp. 417-424] [English abstract]

ヒト生物時計の同調によるアフター効果

  • After-effect of entrainment on the period of human circadian system
  • 遠藤拓郎,本間さと,橋本聡子,本間研一 (北海道大学医学部統合生理学講座)

12 名の健康被験者を実験室にて 22 日間隔離し,直腸温リズムのフリーラン周期の経時変化を解析した.フリーラン周期は隔離直後24.6 h であったが徐々に延長し隔離後半 は25.2 h なり,同調によるアフター効果が認められた. [Regular paper pp. 425-430] [English abstract]

胃ベシクルのリン脂質フリッパーゼにおよぼすイオノフォアの影響

  • Effects of ionophores on the phospholipid flippase activity of gastric vesicles
  • 鈴木秀博,森井孫俊,竹口紀晃 (富山医科薬科大学薬学部薬物生理学講座)

我々の発見したブタ胃ベシクルのリン脂質フリッパーゼは,バリノマイシン−K+複合体によって阻害され,プロトノフォア CCCP や FCCP は,この阻害を回復させることがわかった. [Regular paper pp. 431-436] [English abstract]

腸間膜微小循環におけるアンギオテンシン II 急性反応時の Superoxide の関与

  • Involvement of superoxide in acute reaction of angiotensin II in mesenteric microcirculation
  • 川添 剛,小坂博昭*,米山弘人*,秦 維郎 (香川医科大学医学部形成外科学・*第二生理学)

腸間膜微小循環におけるアンギオテンシン II の急性血流停止効果を SOD が減弱させる.即ち angiotensin の急性血管収縮反応の一部は superoxide anion 産生により担われている. [Regular paper pp. 437-443] [English abstract]

光学的測定法で検出されたラット脳スライスの海馬台から帯状回への神経活動伝播の時空間特性

  • Spatiotemporal properties of neural activity propagation from the subicular complex to the posterior cingulate cortex in rat brain slices detected by the optical recording technique
  • 王 健,赤池 忠*,曽我部正博 (名古屋大学医学部第二生理学教室,*北海道大学歯学部生理学教室)

ラット脳前額断スライスに膜電位の高速光学測定法を適用して,海馬台刺激による帯状回への神経活動の伝播を測定した。海馬台から帯状回への移行部で信号増 強が生じた後,帯状回から視覚領にわたる活動伝播が見られた.この増強と伝播は抑制性回路により調節されることが示唆された. [Regular paper pp. 445-455] [English abstract]

ナトリウムイオンチャネルアイソフォームにおけるバトラコトキシン感受性喪失点変異体は,グラヤノトキシンの作用を無効にする

  • Point-mutations related to loss of batrachotoxin binding abolish grayanotoxin effect in Na+ channel isoforms
  • 石井秀将,木下英司,木村隆広,焼廣益秀*,山岡 薫,井本敬二**,森 泰生**,瀬山一正 (広島大学医学部)

バトラコトキシンの感受性が喪失したナトリウムイオンチャネル点変異体は,グラヤノトキシンの感受性をも失うことが明らかとなった.このことよりバトラコトキシンとグラヤノトキシンは,結合部位を共有していることが示唆された. [Short communication pp. 457-461] [English abstract]

トリメチルチン投与後のマウス海馬における tPA-plasmin 系の活性化: highly polysialylated NCAM の分解の可能性

  • The activation of the tissue plasminogen activator-plasmin system induced in the mouse hippocampus after injection of trimethyltin: Possible proteolysis of highly polysialylated NCAM
  • 遠藤 哲,橋本賢二,高田由美子**,高田明和* (浜松医科大学歯科口腔外科学講座・*第二生理学教室・**基礎看護学)

トリメチルチンは,神経毒作用があり海馬歯状回での顆粒細胞の変性および PSA-NCAM の分解を誘導するといわれている.今回われわれは,トリメチルチン投与による PSA-NCAM の分解に対する tPA-plasmin system の作用を調べるためトリメチルチンをマウスの腹腔内に投与した.これらの結果は,トリメチルチン投与により tPA-plasmin system が活性化され,その結果 PSA-NCAM が分解されることを示唆した. [Short communication pp. 463-466] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 49 no 6 [

一酸化窒素による延髄の中枢性循環調節メカニズム

  • Central control mechanisms of circulation in the medulla oblongata by nitric oxide
  • 前田正信,井上正岩,高尾聖二,中井正継* (産業医科大学産業生態科学研究所応用生理学,*国立循環器病センター研究所)

延髄の心臓血管中枢における一酸化窒素 (nitric oxide, NO) の役割について総説した.一酸化窒素合成酵素 (nitric oxide synthase NOS) の脳内の解剖学的分布,NOS 阻害剤を静脈内あるいは脳室内に投与した時の循環への影響,NO 産生剤または NOS 阻害剤を延髄孤束核や延髄腹外側部に微量注入した時の循環への影響,それらの部位の電気生理学的研究,さらに新しい方法としての分子生物学的方法を用いた 研究を紹介した. [Review pp. 467-478] [English abstract]

Haloperidol の心筋細胞内 Ca2+ 動態に対する影響

  • Haloperidol prolongs diastolic phase of Ca2+ transient in cardiac myocytes
  • 石田 英之,星合清隆,星合美奈子,源河朝広,広田有希*,中澤博江 (東海大学医学部生理科学,*蓮見癌研究所)

Haloperidol (HPL) による重篤な不整脈の機序を検討するため,心筋細胞内 Ca2+ ([Ca2+]i) transient への HPL の影響を培養心筋細胞を用いて検討した.HPL は,[Ca2+]i transient の下降相を延長させた.HPL は,Na+/Ca2+ exchanger の機能を抑制しなかったが,筋小胞体の Ca2+ 貯蔵量を低下させ,筋小胞体からの Ca2+ を誘発した. [Regular paper pp. 479-484] [English abstract]

ネコ大脳皮質体性感覚野 (SI) の歯髄駆動細胞に対する扁桃体中心核条件刺激の効果

  • Effects of conditioning stimulation of the central amyglaloid nucleus on tooth pulp-driven neurons in the cat somatosensory cortex (SI)
  • 川原田啓,鎌田健一,松本範雄 (岩手医科大学歯学部口腔生理学講座)

扁桃体中心核 (ACE) の電気的条件刺激は,潜時の短い歯髄駆動細胞には影響を与えず,潜時が 20 msec 以上の細胞の約半数の応答を 74% (n = 35) 抑制した.この ACE の抑制効果は naloxone によって影響を受けなかったがヒスタミン H1 拮抗剤によって約 50% 減弱した. [Regular paper pp. 485-497] [English abstract]

ラットのスタン心臓におけるテトランドリンの収縮機能と微小血管透過性への影響

  • The effects of tetrandrine on the contractile function and microvascular permiability in stunned myocardium in rats
  • Jinming Chen, Zonggui Wu, Sicong Chen, Xiaoqi Gong, Jigen Zhong, Guoyuan Zhang (Dept. of Cardiol., Changzheng Hospital Second Military Med. Univ., China)

テトランドリン投与後のラット生体位虚血後再潅流スタン心臓では,微小循環透過性亢進が抑制されることにより,心筋内 FITC-BSA (アルブミンの一種) 増加抑制,カルシウム流入抑制が起き,収縮性減弱が抑制されたと考えられた. [Regular paper pp. 499-506] [English abstract]

固形食または液状食摂取ラットにおける耳下腺アミラーゼ分泌と胃内容浸透圧の関係

  • Relationship between parotid amylase secretion and osmolality in the gastric contents of rats fed a pelleted or liquid diet
  • 倉橋昌司,猪股孝四郎* (北海道医療大学看護福祉学部生命基礎科学講座・*歯学部口腔生理学講座)

ラットにおいて,固形食の摂取に伴い耳下腺から分泌されアミラーゼは,胃内でデンプンからの還元糖の生成を介胃内容の浸透圧を上昇させる.このような胃内容浸透圧の昇は液状食摂取の場合も見られる. [Regular paper pp. 507-512] [English abstract]

ラット交叉灌流心臓の収縮期末圧容積関係曲線から得られる収縮性の酸素コストの新しい指標

  • New index for oxygen cost of contractility from curved end-systolic pressure-volume relations in cross-circulated rat hearts
  • 辻 毅嗣*,小林修一*,北村惣一郎**,谷口繁樹*,菅 弘之***,高木 都 (奈良県立医科大学生理学第二講座・*第三外科学講座,**国立循環器病センター,***岡山大学医学部生理学第二講座)

ラット交叉灌流心臓左心室の収縮期末圧容積関係は曲線で,一拍毎の心筋酸素消費量 (Vo2)—収縮期圧容積面積 (PVA) 関係は直線である.Ca2+ により収縮性を変えて得られた PVA-independent Vo2と新しい収縮性の指標 (eESP/ESV)mLVV は直線を示し,その勾配は収縮性の酸素コストを表す. [Regular paper pp. 513-520] [English abstract]

モルモット胃前庭部の輪走筋における自発性電気活動 slow wave に対するモノヨード酢酸の作用

  • Effects of iodoacetate on spontaneous electrical activity, slow wave, in the circular muscle of the guinea-pig gastric antrum
  • 荻野佳代,高井 章*,石田行知**,富田忠雄 (藤田保健衛生大学総医研,*名古屋大学医学部生理,**三菱化学生命研)

モルモット胃輪走筋の slow wave はグルコースが存在しないと IAA に より殆ど影響を受けないが,グルコースの再投与で強い抑制を受ける.この抑制は代謝産物の蓄積によると考えられる. [Regular paper pp. 521-526] [English abstract]

メダカ嚢胚期細胞においてフィブロネクチンは局所的 [Ca2+]i の上昇を介して偽足生成による細胞運動を引き起こす

  • Fibronectin induces pseudopod formation and cell migration by mobilizing internal Ca2+ in blastoderm cells from medaka fish embyros
  • 重本 尚 (神戸大学医学部第二生理学教室)

メダカ胞胚細胞においてフィブロネクチンは細胞内 [Ca2+]i 動員を介して偽足生成し,細胞の移動を引き起こすことを明らかにした.これは原口陥入等の嚢胚における細胞移動を生理学的に説明する.またこのときの,細 胞内の Ca 動員経路についても検討をくわえている. [Regular paper pp. 527-539] [English abstract]

軽症喘息患者へのロイコトリエン受容体拮抗薬投与後の呼気 NO

  • Decreased exhaled nitric oxide in mild persistent asthma patients treated with a leukotriene receptor antagonist, pranlukast
  • 小林弘祐,高橋裕子,三藤 久,畑石隆治,崔 泰林,田中直彦,川上 倫*,冨田友幸 (北里大学医学部)

4 週間のロイコトリエン受容体拮抗薬の投与が軽症喘息患者の増加ていた呼気 NO を正常レベルにまで減少させた.このことから,軽症喘息患者の呼気NO濃度の増加にはロイコトリエンが関与している可能性が示された. [Short communication pp. 541-544] [English abstract]

アセチルコリン刺激時モルモット胃幽門粘液細胞において高 [K+]o がひきおこした Ca2+ 流入の抑制: G 蛋白による Ca2+ 流入経路の調節

  • Inhibition of Ca2+ entry caused by depolarization in acetylcholine-stimulated antral mucous cells of guinea pig: G protein regulation of Ca2+ permeable channels
  • 中張隆司, 吉田秀世,今井雄介,藤原祥子*,大西敦子*,島本史夫*,勝 健一* (大阪医科大学生理学・*第2内科学)

単離モルモット胃幽門粘液細胞のアセチルコリン刺激時 Ca2+ 流入に対する膜電位の効果について検討した.膜電位は,細胞外のK濃度変化,或は nystatin を加える事で変化させた.結果は脱分極条件下ではアセチルコリン刺激時 Ca2+ 流入は抑制され,反対に過分極条件下では Ca2+ 流入は増加した.この細胞を百日咳毒素(G 蛋白阻害剤)で処理すると脱分極条件下においても Ca2+ 流入は増加した.このことから,胃幽門粘液細胞における Ca2+ 流入機構は膜電位感受性 G 蛋白により制御されている事が示唆された. [Short communication pp. 545-550] [English abstract]

運動時の唾液アミラーゼ,血中乳酸および筋電図の反応

  • The salivary amylase, lactate and electromyographic response to exercise
  • Jose L Chicharro,Margarita Perez*,Alfredo Carvajal**,Fernando Bandres***,Alejandro Lucia* (Esculela de Enfermeria・**Facultad de Medicina・***Dept. de Med. Legal, Univ. Complutense de Madrid, Apain Fisioterapia y Podologia Facultad de Medicina, Universidad, Spain,*Dept. de Ciencias Morfologicas y Fisiologia, Univ. Europea de Madrid, Spain)

トレーニングした 12 人の若い男性に,徐々に増加する運動疲労テストを行い,血液と唾液を採取して血中乳酸と唾液アミラーゼ閾値を調べた.また外側広筋の筋電図を記録して筋電 図閾値を調べた.乳酸,唾液アミラーゼ閾値,筋電図閾値に,運動強度に対応した有意な変化は見とめられなかった. [Short communication pp. 551-554] [English abstract]