日本生理学雑誌 第59巻 JJP号

表紙の説明

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IN JJP: JJP和文要旨 vol 47 no 2 [

コルチコトロピン放出因子の多様性

  • Heterogeneity of corticotropin-releasing factor (CRF)
  • 安田直毅,中村一芳(岩手医大第二生理学)

視床下部から同定されたCRH以外の沢山のCRH関連ペプチドの末梢・血液等での多様な生理作用・分布とストレス反応に対する意義を詳細に述べたレヴュー である.CRF様物質がフラクションに分けられ生理活性が調べられていく過程が描かれている.[Review pp. 147-159] [English abstract]

 血管新生における細胞性線溶系の役割

  • The role of pericellular fibrinolytic system in angiogenesis
  • 深尾偉晴,上嶋 繁,岡田清孝,松尾 理(近畿大医学部第二生理)

血管新生には血管内皮細胞表面での局所的,集約的な線溶系因子の発現によって制御される一連の蛋白分解活性が関与する.ウロキナーゼ型プラスミノゲンアク チベータ(u-PA)とその細胞性受容体である u-PAR を中心とした機構が注目されている.[Review pp. 161-171] [English abstract]

 F344ラットの足三里相当部位(536)への針刺激による脾臓IL-2, IFN-γおよびNK活性の増大

  • Enhancement of splenic inerferon-γ, interleukin-2, and NK cytotoxicity by S36 acupoint acupuncture in F344 rats
  • Yu, Y.,笠原多嘉子,佐藤孝雄,Guo, S.,Liu, Y.,浅野和仁*,久光 正(昭和大医学部第一生理,*同医動物学)

ラットで電気ハリ刺激(S36点,1−5ボルト,1ミリ秒,1ヘルツ;1時間/日,3日間)が脾NK細胞活性を促進した.同時に脾IL-2, IFN-γレベルの上昇がみられたことから,これらの因子が一部NK細胞の活性化に寄与していることが示唆された.[Regular paper pp. 173-178] [English abstract]

光学的マッピングによるラット心房内興奮伝播の解析:正常および頻拍状パターン

  • Optical mapping of conduction patterns of normal and tachycardia-like excitations in the rat atriu
  • 酒井哲郎,廣田秋彦*,佐藤容子,佐藤勝重,神野耕太郎(東京医科歯科大医学部第二生理,*島根医大第二生理)

膜電位感受性色素を用いた活動電位の光学的多部位同時測定法をラット心房標本に適用して興奮波伝播のマッピングをおこない,生理的自発興奮および電気刺激 で誘発された旋回性興奮について,その伝播パターンを解析した.[Regular paper pp. 179-188] [English abstract]

 有機陽イオンとアンモニウムのショウジョウバエ幼虫筋のグルタミン酸受容体チャネルにおける透過性

  • Permeation of organic cations and ammonium through the glutamate receptor channel in Drosophila larval muscle
  • Ciani, S.,西川光一*,城所良明*(UCLA医学部生理,*群馬大医学部行動医学研究施設)

[Regular paper pp. 189-198] [English abstract]

 注射針穿刺によるラットのLPS発熱の遅延

  • Lipopolysaccharide-induced fever in rats prolonged by a needle prick
  • 杉本直俊,紫藤 治,桜田惣太郎,永坂鉄夫(金沢大医学部第一生理)

ラットLPS皮下投与による二相性発熱による遅延性発熱現象が腹腔内留置カテーテルからの投与ではみられないことから,皮下注射時の穿刺す刺激によるスト レス性因子(カテコラミン,IL-2, IL-6, TNFなど)がPGEsとともにこの現象に関与していることを示唆した.[Regular paper pp. 199-204] [English abstract]

 2,3ブタンジオンモノキシムはイヌ血液潅流左心室の興奮収縮連関を抑制する

  • 2,3-Butanedione monoxime suppresses excitation-contraction coupling in the canine blood-perfused left ventricle
  • 高砂利行,後藤葉一*,川口 鎮,畑 勝也,佐伯彰夫,Tailor, T.W.,西岡武彦,菅 弘之**(国立循環器病センター研究所,*同病院,**岡山大医学部第二生理)

BDM (5[English abstract]

 赤血球細胞における膜電位−容積変化の関連

  • Photometric assessment of volume changes coupled with membrane potential in valinomycin-incorporated red blood cells
  • 楊 雪松,神野耕太郎(東京医科歯科大医学部第二生理)

最近,細胞容積調節の研究が注目を浴び始めている.楊と神野はこの論文で,バリノマイシン処理をした赤血球をモデルにして,細胞容積と膜電位を光学的に測 定し,細胞容積は脱分極に伴って増大すること,両者の関係は定量的に表現できることをはじめて明らかにした.細胞容積を規定するのは水の移動であり,これ は正味の溶質移動(この場合はKCl移動)に依存していることがここでも見事に示されている.[Regular paper pp. 217-230] [English abstract]

 塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の中枢投与によるエタノール胃潰瘍の形成低下

  • Intracisternal injection of basic fibroblast growth factor reduces the severity of gastric mucosal lesions evoked by ethanol in rat
  • 渡辺泰男,奥村利勝,小野寺秀,高橋伸彦,小路悦朗,高後 裕(旭川医大第三内科)

胃酸に依存しない機序で胃潰瘍を防ぐ作用を持つという仮説を検討した.エタノールを胃内に投与すると胃潰瘍が発生する.このエタノールによる胃潰瘍は, bFGFの大槽内投与により抑えられたが,bFGFの腹腔内投与では抑えられなかった.エタノールで誘発される胃潰瘍は,胃酸に無関係であるとされている ので,今回の実験から,bFGFは中枢に作用して胃酸には関係しない機序で,抗胃潰瘍作用を示すと推測される.[Short communication pp. 231-233] [English abstract]

 ラット肝細胞においてATP, thapsigargin, cAMPは3種の異なるCa2+流入経路を活性化して,細胞内Ca2+濃度上昇を引き起こす

  • ATP, thapsigargin and cAMP increase Ca2+ in rat hepatocytes by activating three different Ca2+ influx pathways
  • 五十里彰,酒井秀紀,竹口紀晃(富山医科薬科大薬学部薬物生理)

最近,Caストア枯渇によって開くCa2+チャネルの存在が話題を呼んだが,細胞はこの他にも多種のCa2+流入経路を持っているようだ.この論文では, 五十里らが非興奮性細胞である肝細胞のCa2+流入通路には,La3+感受性のもの,verapamil感受性のもの,そして両者に対して感受性を示すも のの三種があることを示している.今後の分子論的道程同定に期待がかかる.[Short communication pp. 235-239] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 47 no 3 [

アプリシアニューロンでみられるPKCの活性化による受容体とG蛋白の間の機能的アンカップリング

  • Functional uncoupling between the receptor and G-protein as the result of PKC activation, observed in Aplysia neurons
  • 佐々木和彦,川崎 敏,木村眞吾,藤田玲子,高島浩一郎,松本光比古,佐藤 誠(岩手医大医学部第一生理)

[Regular paper pp. 241-249] [English abstract]

 

フェレット心室筋におけるカフェインおよび急速冷却により放出されたCa2+除去に対するミトコンドリアの関与

  • Contribution of mitochondria to the removal of intracellular Ca2+ induced by caffeine and rapid cooling at low temperatures in ferret ventricular muscles
  • 田中悦子,栗原 敏(東京慈恵会医大第二生理)

白イタチの心室筋内のカルシウム濃度変化を発光タンパクエクオリンで測る系を用いて,急速冷却,カフェイン刺激,電気刺激で駆動したときの細胞内遊離カル シウムの除去機構を調べた.その結果,急速冷却とカフェイン刺激ではミトコンドリアの寄与が大きいことを示した.[Regular paper pp. 251-262] [English abstract]

 

フェレット心室筋における急速冷却とカフェインによるCa2+放出機構

  • Ca2+ release induced by rapid cooling and caffeine in ferret ventricular muscles
  • 田中悦子(東京慈恵会医大第二生理)

上の論文と同じ系を用いて,急速冷却とカフェイン刺激によるカルシウム動員機構を調べた.その結果,前者のカルシウム動員機構には細胞内ナトリウムを必要とし,後者とは異なる機構であると結論した.[Regular paper pp. 263-272] [English abstract]

 

ルテニウムレッド処理フェレット心室筋の細胞機能と電顕像

  • Effects of ruthenium red on the cellular functions and ultrastructure in intact ferret ventricular muscles
  • 田中悦子,川井 真,栗原 敏,堀田康明*,Soji, T.*(東京慈恵会医大第二生理,*名古屋市立大医学部第一解剖)

上の論文と同じ標本を用いて,ルテニウムレッドの作用を調べた.その結果,ルテニウムレッドは筋小胞体からのカルシウム放出の抑制,ミトコンドリアのカル シウム取り込みの阻害,収縮蛋白質系のカルシウム感受性の低下をきたすこと,更に細胞内に入ることを形態学的にも示した.[Regular paper pp. 273-281] [English abstract]

 

イヌ血液潅流右室乳頭筋の等尺性単収縮のハイブリッドロジスティック性

  • Hybrid logistic characterization of isometric twitch force-time curve of intact blood-perfused canine right ventricular papillary muscle
  • 坂本泰祐,高木 都*,幡 芳樹,松原広己,荒木惇一,菅 弘之(岡山大医学部第二生理,*奈良県立医大第二生理)

心室の等容量収縮・弛緩時の内圧は,圧上昇相および下降相に対応する2つのS字状曲線の差として表されるが,同じ事情は,右心室の乳頭筋の等長性収縮およ び弛緩に関しても成り立つことを交叉循環した犬の心臓で見出した.[Regular paper pp. 283-289] [English abstract]

 

交差緩和時間測定による軟骨内の水状性の研究

  • Cross-relaxation times of normal and biochemically induced osteoarthritic rabbit knee cartilages
  • 桑田一夫,佐藤真司*,恵良聖一,曽我美勝,木田公洋*,岩間 亨**,加藤一夫***,松永隆信*,亘 弘****(岐阜大医学部第二生理,*同整形外科,**同神経外科,***同第一病理,****生理学研究所)

桑田らは,NMRを用いて家兎膝関節軟骨からのプロトンのスピン格子緩和時間と交差緩和時間を測定し,ヨード酢酸によって得た変形性関節症モデルでは前者 は正常だが後者が有意に短縮することをはじめて明らかにした.これはおそらく本変性疾患における軟骨内蛋白(おそらくコラーゲン)の組成変化によるものと 著者らは推定している.いずれにせよ,NMR法はこの方面でも優れた非侵襲的検査法となりそうだ.[Regular paper pp. 291-297] [English abstract]

 

マウス膵B細胞におけるNa+流入の抑制のよる細胞内ATP濃度の上昇

  • Suppressing Na+ influx induces an increase in intracellular ATP concentration in mouse pancreatic β-cells
  • 丁 維光,北里 宏(滋賀医大第二生理)

マウスラ氏島β-細胞においてNa+流入を抑制するとATP感受性K+チャネルが閉じて脱分極がおこる.この現象が細胞内のNa濃度が減少し膜NaポンプのATPの消費が減少してATP濃度が上昇した結果であることを示した論文.[Regular paper pp. 299-306] [English abstract]

 

磁気によるヒト白血球細胞のアポトーシス誘導

  • Induction of apoptosis in human leukemic cells by magnetic fields
  • 久光 正,成田和広,笠原多嘉子,瀬戸 明,Yu, Y.,浅野和仁*(昭和大医学部第一生理,*同医動物学)

50Hzの低周波電磁波をヒト骨髄性白血病のセルラインであるHL-60とML-1に照射するとアポトーシスが起こるが,正常白血球では起こらないことを 発見し,低周波電磁波の医学への応用の可能性を示唆した短報である.[Short communication pp. 307-310] [English abstract]

 

ラット潅流顎下腺の浸透圧負荷後の間質浸透圧の経時変化の推定

  • A method to estimate the transient interstitial osmolarity change upon application of osmotic stress in perfused rat submandibular gland
  • 吉田秀世,中張隆司,今井雄介(大阪医大第一生理)

細胞間液の浸透圧をリアルタイムで測定することは困難である.著者らは臓器潅流実験における細胞外空間での潅流液交換についてのモデル化を行い,その検証 のため潅流液のClのステップ交換とAg-AgCl電極を用いて細胞間隙のCl濃度変化を測定した.[Technical note pp. 311-316] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 47 no 4 [

体プレチスモグラフィーによるマウスの換気量測定

  • Determination of ventilatory volume in mice by whole body plethysmography
  • 小野寺誠,桑木共之*,**,熊田 衛**,増田善昭(千葉大医学部内科,*同生理学,**東大医学部生理)

全身プレチスモグラフ法による意識下と麻酔下のマウスの一回換気量測定の信頼性を,直接プレチスモグラフ,ニューモタコグラフ法に対して比較検討したとこ ろ,前者の誤差は,後二者に比べ7%以下であり,前者の有用性が示された.[Regular paper pp. 317-326]
[English abstract]

 

ラットにおける低圧下の酸素状態と甘味物質

  • Hypobaric hypoxia and hedonic matrix in rats
  • Singh, S.B., Sharma, A., Panjwani, U., Yadav, D.K., Chandra, K., Sharma, K.N., Selvamurthy, W.(Defense Inst. of Physiol. and Allied Sci., India)

ラットを用いて,7620メーターの高地の気圧環境に相当する低圧,低酸素状態を,1日に21時間,連続18日間続けた時に見られる摂食行動と,異なる味 をもつ物質摂取反応を調べた.低酸素に曝露している18日間に,毎日の食事摂取量,水分摂取量と体重は低下し,軽度の低血糖が認められた.ラットはその間 甘いものをとる傾向があり.グルコースとサッカリンを与えると,エネルギー源となるグルコースをとる傾向が認められた.高地におけるストレスは食事摂取量 に影響を与えるが,その場合味覚反応,たとえば甘みあるいはエネルギー源となる甘みに対する反応も重要な意味を持つことを示唆する.[Regular paper pp. 327-333]
[English abstract]

 

人一回呼出法による一酸素窒素

  • Nitric oxide in single-breath exhalation in humans
  • 鈴木英雄,Krasney, J.A.(池上総合病院内科)

NOを含むガスをヒトに吸引させ,呼気のはじめの部分と終末部分のガスのNO濃度を測定した.呼気終末部分のNO濃度が低いことから,気道において産生されたNOの一部が肺胞からも除去されうる可能性を指摘した.[Regular paper pp. 335-339]
[English abstract]

 

皮膚冷却刺激が運動単位の活動様式に及ぼす影響

  • Effects of cold stimulation of human skin on motor unit activity
  • 与那正栄(東京薬大体育)

温 度の運動単位活動への効果を,筋温度を変化させない−10゜Cの空気中での皮膚冷却による上腕二頭筋の随意的等尺性収縮で検討し,皮膚温度の低下が,特に 末梢の皮膚温度受容器とシナプス連絡をもつ高閾値運動単位数を漸増させる力を選択的に低下させることを示唆した.[Regular paper pp. 341-348]
[English abstract]

 

妊娠中におけるラット子宮筋ミオシン重鎖発現の変化

  • Changes in myosin heavy chain (MHC) expression during pregnancy in rat uterus
  • Kumar, R., Malhotra, R.K., Katoch, S.S.(Dept. of Biosci., Himachal Pradesh Univ., India)

ラット子宮筋のミオシン重鎖(MHC)は204 kDa (MHCI)と200 kDa (MHCII)の2種類からなり,妊娠によりMHCIは増加し,MHCIIは減少する.妊娠によりMHCの分解が亢進する.[Regular paper pp. 349-354]
[English abstract]

 

ウサギ房室結節細胞における低閾値持続性内向き電流の存在

  • Existence of a low-threshold and sustained inward current in rabbit atrio-ventricular node cells
  • 過 集慶,野間昭典(京大医学研究科細胞機能制御)

家兎房室結節単離心筋細胞の中の紡錘状細胞で,すでに洞結節歩調取り細胞で見られている持続内向き電流Istと同様なものと考えられる,ニカルジピンで抑制される低閾値持続内向き電流の存在を見いだした論文である.[Regular paper pp. 355-359]
[English abstract]

 

高酸素親和性赤血球の低流量潅流下での最大収縮時骨格筋酸素摂取

  • Oxygen uptake in maximally contracting muscle perfused at low flow with high O2 affinity erythrocytes
  • 上月久治,高木 都,石立裕美,坂田 進,清水 悟,大賀好美,岸 隆司,榎 泰義(奈良県立医大第二生理)

イ ヌ腓腹筋血管潅流標本(圧・量一定)にて最大筋収縮時のVo2とPvo2の関係を正常赤血球と高酸素親和性赤血球溶液で比較した.Pvo2は前者で高いが Vo2とO2抽出率は同じであった.血球の毛細血管通過時間が長くシャントが一定のため,Pvo2とは無関係にO2摂取が生じると推測した. [Regular paper pp. 361-366]
[English abstract]

 

イモリ嗅細胞の活動電位発生に及ぼすNa+, Ca2+ 電流の効果の定量的解析

  • Quantitative analysis of Na+ and Ca2+ current contributions on spike initiation in the newt olfactory receptor cell
  • 河合房夫,倉橋 隆,金子章道(生理学研究所生体情報)

イモリ嗅覚受容器細胞(ORC)をもちい,実際の活動電位の発生時におけるT型Caチャネル電流の寄与分を膜電位固定下での電流測定をもとにしてイオン電流モデルから予測した研究.[Regular paper pp. 367-376]
[English abstract]

 

鶏胚心筋の興奮収縮連関調整におけるPKCの関与

  • Participation of PKC in modulation of the excitation-contraction process of chick embryo cardiac muscle
  • 波多江純眞(福岡大医学部第二生理)

Chick embryo の心筋条片における単収縮と細胞内Ca濃度変化に対してphorbol ester (TPA) が抑制的に作用し,かつ,高濃度K溶液によるCa流入を抑制することから,protein kinase C (PKC) が心筋細胞内Ca調節と収縮に影響している可能性がある.[Regular paper pp. 377-383]
[English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 47 no 5 [

Neuronal mechanisms of respiratory rhythm generation: An approach using in vitro preparation

  • 鬼丸 洋,荒田晶子,本間生夫(昭和大医学部第二生理)

本邦において世界に先駆けて開発された摘出新生ラット下部脳幹・脊髄標本を用いて,呼吸リズム形成機序を詳細に解析した著者らの成績が主に記載されてい る.他研究者の成績も十分考慮してあり,呼吸中枢機序を解明する際の指標となる重要な総説である.[Review pp. 385-403] [English abstract]

 

ケージドATPパルス光分解による骨格筋クロスブリッジ研究

  • The cross-bridge mechanism studied by flash photolysis of caged ATP in skeletal muscle fibers
  • 堀内桂輔(大分医大生理)

ケージド物質パルス光分解法の最初の実用は,骨格筋クロスブリッジ研究として1982年に報告された.これまで報告されてきた骨格筋ケージドATP実験の 結果を見渡し,クロスドブリッジ化学力学構造関連の研究に残されている問題点を整理する.[Review pp. 405-415] [English abstract]

 

Desensitization of the GABAA receptor shifts the dynamic range of retinal horizontal cells due to light and dark adaptation

  • 臼井支朗,Kawai Fusao, Kamiyama Yoshimi, Usui Shiro(豊橋技術科学大情報工学)

背景光照射によって魚類網膜水平細胞の光応答振幅がゆっくりと変化することは以前から知られており,どのようなメカニズムでこのような現象が発生するのかは網膜研究者の間で謎とされていた.今回の報告はこの現象が錐体視細胞のGABAA受容体によるものであることを明確に示したものである.[Regular paper pp. 417-429] [English abstract]

 

ラットの脳の腸間膜微小血管を用いた実験的急性血栓形成におけるフォンウィルブランド因子,フィブリノーゲン,フィブロネクチン関与の相違

  • The difference involvement of von Willebrand factor, fibrinogen and fibronectin in acute experimental thrombosis in rat cerebral and mesenteric microvessels
  • 山本順一郎1,石井いずみ1,沖田奈穂子1,佐々木康人1,山下 勉1,2,松岡 瑛2,木村敏明1,3,John C. Giddings4,渡辺定博5,関 淳二6(1神戸学院大栄養学部生理,2兵庫医大臨床病理,3神戸大医学部保健,4Dept. of Haematol., Univ. of Wales Coll. of Med. UK,5神戸市看護大基礎医学系,6国立循環器病センター研究所生体工学)

血小板はずり力の影響下で,種々の接着分子を介して血液細胞やその他の表面に結合する.本件本研究はラット微小血管にレーザー照射により血小板血栓を形成 させる方法を用いて,血栓形成におけるずり力と接着分子の関与を明らかにした.[Regular paper pp. 431-441] [English abstract]

 

新生児ラットの下部脳幹・右迷走神経・心臓摘出標本

  • An in vitro brainstem-heart preparation of the neonatal rat with intact right vagus nerve
  • 粟生田輝,林 文明*,福田康一郎*,増田善昭(千葉大医学部第二生理・*第三内科)

新生ラットを用いて摘出脳幹—迷走神経—心臓標本を作成した.舌咽神経・迷走神経求心路を刺激すると,下部延髄を介して反射性に徐脈反応がおこることを明 らかにした.また迷走神経支配の偏側性は生後発達することが示唆された.[Regular paper pp. 443-448] [English abstract]

 

ラット副腎スライス標本における副腎髄質細胞の機能的構造とシナプス伝達

  • Functional organization of chromaffin cells and cholinergic synaptic transmission in rat adrenal medulla
  • 梶原利一1,2,Olav Sand3,城所良明4,Michael E. Barish5,飯島敏夫1(1電子技術総合研究所超分子部,2東北大情報科学研究科,3Dept. of Biol., Univ. of Oslo, Norway,4群馬大医学部行動生理,5Div. of Neurosci. Beckman Res. Inst. of the City of Hope, USA)

副腎髄質細胞に投射するコリン作働性神経からのニコチン型アセチルコリン受容体を介したシナプス入力の性質をラット副腎髄質のスライス標本を用いて形態学的,光学的,電気生理学的に詳細に解析した研究である.[Regular paper pp. 449-464] [English abstract]

 

最大下作業時における鼻および口呼吸時の呼気一酸化炭素の比較

  • Comparison of exhaled nitric oxide and cardiorespiratory indices between nasal and oral breathings during submaximal exercise in humans
  • 安田好文,伊藤智式,宮村実晴*,西野仁雄**(豊橋技術科学大体育保健センター,*名古屋大総合保健体育科学センター,**名古屋市大医学部生理)

気道から排出されるNOの運動時の呼吸機能への影響についてヒトの口呼吸と鼻呼吸で比較した.鼻呼吸でNO排出量が多いが,その他の呼吸パラメータや心拍 数に差は認められないことから,主に鼻腔から排出されるNOの呼吸への影響は少ないと推定した.[Regular paper pp. 465-470] [English abstract]

 

微小重力環境がラット後肢の速筋の酵素活性ならびに微細構造に与える影響

  • Effects of spaceflight on enzyme activities and ultrastructure of fast-type skeletal muscles of rats
  • 吉岡利忠,山下勝正,田中 修,内田宙司,木村みどり,藤田和彦,関口千春*,長岡俊治*(聖マリアンナ医大第二生理,*宇宙開発事業団)

ラット骨格筋の酸化的および解糖系酵素活性と微細構造が,宇宙飛行の微小重力の影響によりどのように変化するのか調べた.[Short communication pp. 471-476] [English abstract]

 

Effects of nitric oxide synthase inhibition on phospholipid fatty acid composition of brwon adipose tissue

  • シャハ シャマル クマル,大野都美恵*,大日向浩,Kuroshima Akihiro(旭川医大生理学第一,*北海道教育大旭川校家庭科)

ラット褐色脂肪細胞(BAT)の機能調節に関するNOの役割を明らかにすべく,BATのリン脂質脂肪酸に及ぼすNO合成酵素(NOS)阻害剤の影響を調べ た研究であり,NOS阻害剤であるL-NAMEが特定のリン脂質成分を変化させることを明らかにした.[Short communication pp. 477-480] [English abstract]

 

The maximal lactate steady state in elite endurance athletes

  • A.R. Hoogeveen, J. Hoogsteen,G. Schep(St. Joseph Hosp. Veldhoven, The Netherlands)

運動選手(トライアスリートとサイクリスト)でフィールドで40 km自転車走を行い定状状態での乳酸レベル(最大乳酸定状状態)を測定した.その結果,従来実験室で得られた値より高く,乳酸の意義の再検討が示唆され た.[Short communication pp. 481-485] [English abstract]

IN JJP: JJP和文要旨 vol 47 no 6 [

Motor control for bilateral muscular contractions in humans

  • 小田伸午(京大総合人間学部)

両側の筋肉を最大限に収縮した時の収縮力は一側の同じ筋肉の最大収縮の時より小さい.この両側性筋力欠損は恐らく脳梁を介する半球間抑制によるものである.また両側性収縮の時には左右の運動野への共通入力が働く.[Review pp. 487-498] [English abstract]

 

腎遠位尿再管における NaCl のホルモンと浸透圧による調節機構

  • Hormonal and osmotic regulation of NaCl transport in renal distal nephron epithelium
  • 丸中良典(Div. of Respir. Res., Hospital for Sick Children, Univ. of Toronto)

腎遠位尿再管でのナトリウムの再吸収は,体内ナトリウム量およびそれに伴う血圧の調節に寄与している.本総説においては,腎遠位尿再管におけるナトリウム 再吸収過程のアルドステロンや血漿浸透圧等による調節機構についての解説を試みた.[Review pp. 499-511] [English abstract]

 

慢性的に寒冷暴露したラットでは酸化能力の高い骨格筋だけに微小循環系の再構築が観察された.

  • Chronic cold exposure stimulates microvascular remodeling preferentially in oxidative muscles in rats
  • 鈴木淳一,高  明*,大日向浩**,黒島晨汎**,小山富康*(北海道教育大冬季スポーツ教育研究センター,*北大電子科学研究所生理部門,**旭川医大第一生理)

ラットを4週間 5゜C の寒冷環境に暴露し,細動脈側と細静脈側の毛細血管の割合の変化を骨格筋で観察した.その結果,酸化能力の高いヒラメ筋と腓腹筋内側頭の深部だけに細動脈 性毛細血管密度の増加が観察された.[Regular paper pp. 513-520] [English abstract]

 

Ryanodine decreases internal Ca2+ recirculation fraction of the canine heart as studied by postextrasystolic transient alternans

  • 幡 芳樹,清水壽一郎,細木信吾,松原広己*,荒木淳一,大江 透*,高木 都**,高砂利行***,タッド・テーラー****,菅 弘之(岡山大医学部 第二生理,*循環器内科学,**奈良県立医大第二生理,***三菱三原病院,****サウスイースト・テキサス・メディカル・アソシエイツ)

イヌ血液潅流リアノジン処理左心室の興奮収縮連関に係わる総カルシウム動態を,期外収縮後収縮性増強の減衰時定数から計算して求めた細胞内カルシウム再循 環率から推定し,従来の方法では求められなかった新知見を得た.[Regular paper pp. 521-530] [English abstract]

 

低酸素性換気抑制時の代謝および酸塩基平衡

  • Metabolism and acid-base status duringhypoxic ventilatory depression
  • 須田知子,福田康一郎(千葉大第二生理)

低酸素性換気抑制時,O2 消費量に対し CO2 排出量の低下は軽度であった.動脈血酸塩基平衡状態に著変はなくても,乳酸産生と,その緩衝による CO2 産生量の増加が,換気量に影響することが示唆された.[Regular paper pp. 531-536] [English abstract]

 

ラット左冠動脈の一過性虚血・再潅流による左室壁毛細血管網の増強

  • Effects of transient coronary occlusion on the capillary network in the left ventricle of rat
  • 謝 忠琳,高  明,小山富康(北大電子研)

左冠動脈を3分間結ししたのち再潅流したラットにおいて,1か月後に左心室壁内層の毛細血管密度とくに細動脈性毛細血管が大幅に上昇していた.同時に血管 増殖因子,bEGF や VEGF 蛋白の発現することが認められた.[Regular paper pp. 537-543] [English abstract]

 

冷水顔面浸水後心拍変動の減衰振動曲線へ回帰

  • Decremental oscillation curve fitting of heart rate response following face immersioninto cold water
  • 富永洋功,中津高明*,草地省蔵,村上昌弘,豊永慎二*,山本桂三,渡邊朋子,佐野一成,間島圭一*,辻 孝夫(岡山大医学部第一内科,*屋島総合病院)

冷水顔面浸水後の心拍変動を減衰振動曲線に回帰し,同時に自律神経の関与を解析した.相関係数 0.75 以上で有意に回帰され,RLC 回路よりなる等価電気回路にシミュレイションされ,本解析の有用性が示唆された.[Regular paper pp. 545-551] [English abstract]

 

低浸透圧刺激によって生じる A6 細胞の全細胞電流: 細胞体積および細胞内 Ca2+ との関係

  • Hypotonically induced whole-cell currents in A6 cells: relationship with cell volume andcytoplasmic Ca2+
  • YU, Wen-ge,曽我部正博(名古屋大医学部第二生理)

カエル腎上皮由来の細胞株 A6 細胞の低浸透圧刺激 (80% osmolality) に対する regulartory volume decrease (RVD) は,体積膨張に引き続く細胞内 Ca2+ の上昇に依存した相互依存的な外向き K+ 電流と Cl− 電流の増加によることが示唆された.[Regular paper pp. 553-565] [English abstract]

 

Effect of lipophilic ions on the intramembrane charge movement and intracellular Ca2+ release in fetal mouse skeletal muscle cells

  • INOUE, I.,SHIMAHARA, T.*,BOURNAUD, R.*(Inst. for Enzyme Res., Tokushima Univ.,*Lab. de Neurobiol. Cell. et Mol., CNRS, France)

この論文はハツカネズミ胎児の骨格筋について興奮収縮連関における電荷移動の voltage-sensor 分子機構を脂溶性の電荷色素をもちいて巧みに解析し,とくに voltage-sensor での陰性電荷の重要性を明らかにしたもの.[Short communication pp. 567-570] [English abstract]

 

遺伝性球状赤血球症 (HS) 赤血球の加圧による溶血はアニオン輸送阻害剤 DIDS により抑制されない

  • High-pressure-induced hemolysis of hereditary spherocytic erythrocytes is not suppressed by DIDS labeling
  • 山口武夫,寺田成之,井手口裕*(福岡大理学部化学・*医学部臨床検査)

アニオン輸送阻害剤 (DIDS) を作用した正常赤血球,及び遺伝性球状赤血球症 (HS) 赤血球の加圧による溶血特性から,HS 赤血球膜におけるバンド3と骨格タンパク質(主に,スペクトリン)間相互作用の異常が示唆された.[Short communication pp. 571-574] [English abstract]