日本生理学会誌 第79巻1号

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表紙の説明

大会名:第93 回日本生理学会大会

演題番号:3P-144

演題名:IBD,IBS を繋ぐ消化管ペースメーカ活動

演題名(英語):Gut pacemaker activity in the cross-link between IBD and IBS.

演者:中山晋介

所属:名古屋大・院医・生理

説明(キャプション):

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は,器質性腸疾患に分類され,日本では近年において患者数が急増している.これは,西洋化した食習慣やビジネス・学校生活などでの過剰競争とも関連づけられ社会問題化している.一方,過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は,セロトニンシグナルなどによる異常が原因とされ,機能性腸疾患としてこれまでIBD とは別の病態と考えられてきた.しかし最近の遺伝子疫学調査から,IBD に関与すべきと思われる遺伝子(e.g.,IL-10,TNFα)変異を有するIBS 患者群の存在が知られるようになった.IBD,IBS は連続した病態として捉えられる可能性がある.

       消化管が蠕動・分節運動などを発生し組織全体として機能するためには,局所的な興奮・抑制が精妙に調節される必要がある.そこで,運動の基調となる時間・空間的な電気興奮を解析するために,透析膜小片下に消化管筋層を固定し低インピーダンス微小電極アレイ(microelectrode array:MEA)による8×8 フィールドポテンシャル計測を行った (E).

        本手法を用いることで,生理的条件を保ちながら長時間の自発性電気興奮の記録が可能となった.セロトニン投与は,小腸での自発性興奮(ペースメーカ活動)の空間的連携を高めた.MEA 観測領域(1mm2)において,進行方向垂直に広がる活動領域移動(migrating)パターンの発生頻度が増加した(A-D).さらに,セロトニン投与は還元型グルタチオンによる自発性興奮の抑制からも回復を促進した.図は,セロトニン投与下で記録されたMEA データの解析である.

A:代表的電極(ME)部位でのペースメーカ電位記録.外液はnifedipine を含み二次的な平滑筋興奮を抑制している.

B:フィールドポテンシャルマッピング.A の下線部に相当.各ME 間は,50 点でスプライン補間.ペースメーカ電位が微小領域で移動している.

C:ペースメーカ活動の位相比較.

D:2 値化による活動領域migrating パターンの描出.

E:透析膜小片によりMEA 上に固定されたマウス小腸筋層標本. 利益相反の有無:無し