第1回入澤彩賞選考の報告

入澤彩賞選考方法の決定をWPJ(生理学女性研究者の会)は生理学会より委託されています。実際の選考は選考委員(WPJ会員および非会員より構成)が行いますが、WPJとしては選考の公平性を保つため選考過程をできるだけオープンにしたいと考えています。以下に、第1回入澤彩賞の選考がどのように行われたのか、をご報告いたします。

1. 選考委員の選出

多くの場合、賞選考委員は応募が始まる前にすでに決まっています。しかし、入澤彩賞の場合は、応募者が出揃った後に選考委員を選びました。その理由の1つは、選考委員の応募権を奪わないためです。生理学女性研究者の数はそれ程多くないため、選考委員として適任と思われる人は、応募する可能性の高い人、でもあります。したがって応募が始まる前に選考委員をお願いすると、その人の応募権を奪うことになる、というデメリットがあります。また、応募者が出揃った後に選考委員を選ぶことにすると、応募者とあまりに近い関係にある人(共同研究者)を避けることや、応募者の研究分野に明るい人を選ぶことができると、いうメリットがあります。一方で、特定の候補者が有利になるような選考委員の選出を防ぐため、選考委員の名簿の公表を予定しています。誰がどの年の選考にかかわったのかが特定されないようにした上で、3年分の選考委員名簿をまとめて公表する予定でいます。その時に、選考委員の選出に偏りがなかったかどうかがチェックされることになります。
第1回入澤彩賞の選考においては、5名の応募者のそれぞれの研究分野に比較的近い女性研究者5名(WPJ会員1名、非会員4名)に選考委員をお願いしました。生理学会会長の希望もあり幅広い年齢層から選考委員を選び、応募者の提出した申請書一式を選考委員に郵送し選考を依頼しました。

2. 選考委員会による選考の流れ

選考委員長より提出していただいた議事録より要点を抜粋し、実際の選考がどのように行われたのかを説明いたします。

(1)判定基準の確認
募集要項に書かれていた判定基準は「独創性の高い研究や素晴らしい発見をした人」です。この基準を基本に、より具体的な基準として以下の5つの項目が提案されました。
1.他に例を見ない独自の発想に基づく研究
2.研究の継続性
3.その研究を主導しているか
4.国際的な評価を受けているか
5.その研究に発展性はあるか(特に生理学の分野において)

(2)採点表の作成
上記の判定基準が反映されるように以下の項目からなる採点表が作成されました。
1.おもな業績論文の全般的評価
2.おもな業績論文のうち責任著者数
3.おもな業績論文のうち第一著者数
4.主要3編の業績論文のうち責任著者数
5.独創性 視点・発想
6.独創性 方法・技術
7.独創性 学会・専門分野への影響
8.研究の継続性
9.研究の主導
10.国際的評価 (国際学会の招待講演数)
11.生理学分野における今後の発展性
12.技術概念の今後の普及性
13.現在のアクティビティー
14.特記すべきプラス材料
15.特記すべきネガティブ材料

(3)受賞者の選出
各委員の採点表に基づく採点の結果より上位2名が選ばれ、次に、各委員がどちらか一人の名前を委員長に送り、多数決で一人に絞られました。

3. 受賞者の決定

選考委員長より選考結果が報告され、WPJ運営委員会はそれを承認し、受賞者が決定されました。

以上が第1回入澤彩賞受賞者が決定されるまでの選考の経緯です。選考委員および入澤彩賞に応募・推薦して下さった方々、その他関係者の方々に心よりお礼申し上げます。

WPJ運営委員長 少作隆子