新しい日本生理学会の執行部の選出方法について

新しい日本生理学会の執行部の選出方法について

まえおき

日本生理学会は長年にわたって常任幹事会で選出された執行部3名(庶務幹事、編集・広報幹事、財務幹事)を中心に運営されてきました。平成14年に常任幹事会での審議を経て評議員会・総会で承認を受け、庶務幹事は会長となり、平成17年に編集・広報幹事、財務幹事はこれらの任務を兼ねた副会長に名称変更されました。しかし、これら執行部は常任幹事会での選挙によって選出されることは従来の通り変わることはありませんでした。このような形で選出された執行部体制はそれなりに安定した学会運営を行ってきたことには違いありません。また、常任幹事会で決定された事項についても日本生理学雑誌や学会ホームページ(PSJ-Web)を介して会員に周知されておりました。しかし、学会の会員にとって執行部や常任幹事会で行われている学会運営の内容が不透明であり、そのため学会運営に対する会員の無関心さを払拭できなかったことも事実です。その一因として、執行部ならびに常任幹事会の権限が強いこと、あるいはそのように感じられることであります。このことは将来に向けての学会の発展にも決して好ましいことではありません。
昨今、さまざまな学会組織やその活動状態が大きく変動する中で、生理学会が発展していくためには、執行部や常任幹事会の構成や体質を見直していく必要があります。学会運営の中心となる執行部・常任幹事会の構成に関しては、医学部出身者と医学部以外の学部出身者とのバランスを考え、生理学会を「医者の集まり」というイメージから「生理学の研究者の集まり」というイメージへと体質改善する必要があります。このことは最近の学部再編成や学際的研究の推進とも関連して極めて重要なことです。
将来計画委員会では、過去さまざまな形で学会体制の改革に取り組んできましたが、さらにこの改革を一歩推進させるために執行部、特に会長を生理学会会員の選挙によって選出する公選制について検討・提案し、平成18年3月27日の常任幹事会の審議を経て同年3月29日の評議員会・総会において承認されました。ここに、日本生理学会の執行部の新しい選出方法について紹介いたします。

?.会長について

1. 会長の選出方法

会長の選挙は公選制とします。
会長は、多くの会員によって選出するのが民主的です。このことによって、多くの会員には執行部体制やその学会の運営に対して一層の関心が高まり、理解も深まることが期待されます。生理学領域に携わる研究者が医学部出身者に限らず、さまざまな学部領域にまたがっている状態で、生理学の発展に向けてより広い視野に立って生命科学の研究を推進するためには医学部出身者中心の現状を改革する上でも公選制の意義は大きいものと考えられます。
学会の代表者として会長には、公平な立場で発展性と責任のある学会運営が行われるような人物が公選されることが望まれます。

2.推薦委員会と会長候補者の推薦

 

(1) 会長候補者の推薦

会長候補者の推薦は常任幹事会が設置する推薦委員会が行います。
常任幹事会が推薦委員会を設置し、候補適任者を提示して選挙を行うことが、安定した学会運営を維持する上で適当と考えられます。会長としての能力や適性を判断して候補者を公平な立場から選出することが本委員会の重要な責務になります。

(2) 推薦委員会とその役割

1) 推薦委員会委員の選出
推薦委員会は8名の委員で構成され、その委員は常任幹事会での決議によって選ばれます。
推薦委員会の委員を選出する上で、出身学部、研究領域、所属する地区に極端な偏りがないように十分に配慮することが大切です。推薦委員の出身学部、特定の研究領域、特定の地区への偏りは会長候補者の偏りにも結びつく可能性があるためです。このことは、医学部出身者や特定領域の研究者の集まりの印象から脱却する上でも、また、特定の地区の学会運営の印象を払拭する意味でも、生理学会の将来への発展のために重要なことです。
2) 推薦委員会の委員長の選出
推薦委員会は会長が招集し、委員長は委員の互選によって決めます。推薦委員会の委員長が決まるまでは現会長が責任を持って議事を進めることになります。
3) 推薦委員会による会長候補者の選出
推薦委員会は評議員の中から複数名の会長候補適任者を選出し、その公平な推薦理由を明示しなければなりません。
会長候補者は、生理学会の内容をよく理解し、生理学の将来への発展に十分関心と理解を示される人が望まれます。候補者があまり多い場合には、票が割れて、特に投票率が低い時には得票数が少なくても当選する可能性があります。また、信任投票も好ましいことではありません。推薦委員会が推薦する候補者は原則として3名以上が適当と考えられます。選挙人にとって推薦委員会の推薦理由は投票のための大切な判断材料となります。 4) 推薦委員会委員の任期
推薦委員の任期は選出された時点から選挙結果が報告され、承認を受けるまでとなります。

3.選挙の実施

選挙管理委員会が次の要領で実施することになります。

(1) 選挙のための参考資料の提供

会長候補適任者の略歴(職歴、研究歴、本人の写真など)、学会での活動状況、専門分野と研究活動の概要などをまとめて、選挙人に示していただくことになります。 参考資料の内容は自由なスタイルでA4版1枚程度を予定しており、生理学会のホームページ上、あるいは必要に応じて日本生理学雑誌に掲載されます。これは選挙人が会長としての適任者であるかどうかを判断するための貴重な資料となります。

(2) 選挙人

評議員となります。
選挙人は、生理学会のことを長期的に考えて責任を持って選挙に臨める会員としてある程度の学会経験を積んだ評議員が好ましいと考えられます。このことによって評議員に学会運営に関する認識と関心を高めていただくことも重要です。また、学会に関心のある一般会員に評議員としての資格を得ていただく機会でもあります。現在の規約では、評議員としての資格を得ることは決して困難なことではありません。評議員として積極的に学会に参画し、活動していただくことは生理学会の発展のために大切なことです。

(3) 会長の決定と選挙結果の公表

最多得票者を会長として評議員会・総会において承認します。ただし、3名以上の候補者に対して最多得票者の得票数が有効投票数の過半数に満たない場合や上位得票者が同数の場合には、上位2名による決戦投票を実施することになります。これらの選挙の結果は公表されます。
学会運営上の時間的な制約から最多得票者を会長としますが、候補者が多い場合には、時に票が割れることも予想されます。投票率が低い時には得票数が少なくても当選する可能性もあります。選挙の過程でのさまざまな問題点が予想されますが、検討の上、それぞれに適切に対応することが望まれます。

4.会長の任期

4年とし、引き続き再任しない。
任期4年で再任されると、2期8年となり、会長としての期間があまりにも長すぎます。このことは学会の活動性と新鮮さを維持する上で好ましくなく、さまざまな弊害も予想されます。再任するにしても、4年の期間をおくことが適当と考えられます。

?.次期会長について

(1) 次期会長の選出

次期会長は現会長の任期満了の1年前に選出します。
次期会長を置くことで、会長として就任する前の1年間に会長としての職務の円滑な引き継ぎが行われることになり、学会運営上に空白期間が生じることがなくなります。この1年間は会長としての見習い期間ということになります。

(2) 次期会長の役割

次期会長は常任幹事(特別枠)に加え、会長就任まで常任幹事会の構成員となります。
次期会長は常任幹事としての役割を果たすとともに、執行部の実務会議にも加わり会長としての職務について種々学ぶことになります。

?.副会長について

(1) 学会の運営にあたって会長を補佐するために2名の副会長を置いて、それぞれ、編集・広報担当と財務担当を分担することになります。

副会長は学会運営を円滑に行うために会長を補佐します。同時に、学会の重要な機能としてそれぞれに編集・広報と財務を担当していただくことになります。したがって、副会長は、その任務の重要性から学会運営の事情をよく理解している人が望まれます。

(2) 副会長は、会長によって指名され、常任幹事会の承認を受けます。

会長の補佐役である副会長は、学会の運営を機能的に行う上で会長によって指名され、常任幹事会が承認する形を採ります。執行部が独自色を出せるような特徴ある体制が生まれることになりますが、反面常任幹事会あるいは総会・評議員会の評価も受けることになります。

(3) 副会長は、常任幹事会の承認を受けた後、常任幹事会に加わります。

常任幹事から選出された場合には、就任まで常任幹事としての役割を果たすことになりますが、非常任幹事から選出された場合には、常任幹事(特別枠)に加えます。副会長として就任するまでは、次期会長と同様に見習い期間になるわけです。

(4) 副会長の任期は会長の任期に合わせて4年となります。

副会長は会長によって指名されるので、その任期は会長の任期に合わせます。止むを得ない事由によって任期途中で交代する場合は、会長は後任を指名し、常任幹事会の承認を受けます。後任の副会長の任期は残任期間となります。

?.地区常任幹事の欠員補充

会長や副会長が地区別常任幹事から選出されて、地区別常任幹事に欠員が生じた場合には、該当地区の次点者から補充することになります。
会長ならびに副会長は公平な立場から学会の代表者としてその任務に専念しなければなりません。すなわち、会長ならびに副会長を専任職と位置づけます。決して、会長ならびに副会長は地区の利益代表であってはならないわけです。したがって、会長や副会長が地区別常任幹事の中から選出された場合は、該当する地区の常任幹事を次点者から補充することになります。補充された地区常任幹事の任期は前任者の残任期間となります。 以上、新しい執行部の選出方法を述べさせていただきましたが、将来計画委員会としては、新体制のもとに日本生理学会の一層の発展とそれを推進する更なる改革を望んでおります。

2006年4月10日 将来計画委員会 前委員長 前田信治