生理学は私たちが生きている体の仕組みを研究する学問です。現在、約3,000名の会員が生命の営みの謎を解明しようと、日本生理学会の会員となって活動しています。年に一度、日本生理学会大会を開催するほか、地方会学術集会や、海外の研究者と連携した国際学術会議を開催して最新の成果を発表しあい、研究を推進しています。2009年には日本生理学会が、第36回国際生理学会世界大会を京都国際会館で開催し、世界中から4,000人の研究者が参加して、最新の研究成果の発表と討論が行われました。
人が健康に生きていくためにはいろいろな機能が円滑に働いていることが必要です。息をする、血液を体のすみずみに送る、物を食べてエネルギー源を取り入れる、不必要になったものを体外に排泄する、体を動かして運動する、記憶したり考える、五感といわれる感覚の機能、子孫を残す生殖の機能など、様々な体の機能が巧みに働いているのです。これらの体のさまざまな機能の解明を目指しているのが生理学です。
人が病をえたときには、これらの体の機能がうまく働かなくなります。正常な体の働きを知ることは病気の原因や治療を考える上でも必要です。
高齢社会を迎え、私たちは心身ともに健やかに過ごしたいと考えています。そのためには体の働きだけでなく、心と体の関係などについても解き明かすことが求められます。
一見、生理学は難しそうに感じますが、私たちの日常生活に最も身近な生命科学です。生命の謎に迫れば迫るほど、命を得て生きていることの不思議を考えないわけにはいきません。“生命が働いているしくみ”を解明する生理学は、我々が生きている意味に迫ります。それは生命の尊厳を考えることにもつながるに違いありません。
多くの方に生命の不思議を知っていただけるように、日本生理学会は努めてまいりますので、学会に対するご意見やご質問があれば事務局にお寄せください。
日本生理学会理事長:栗原 敏
(東京慈恵会医科大学)