第82回日本生理学会大会(群馬・前橋市、3/28-3/30)において、呼吸ディスカッションの会が、3月28日(火)18:30より前橋東急イン(紫雲の間)にて開催されました(世話人:荒田晶子、理化学研究所・脳科学センター・記憶学習機構研究チーム)。
呼吸ディスカッションの会は、呼吸や呼吸に関連する生理現象について、学会発表では聞けないところを充分にディスカッションできる場を設けようということで始まり、今年で19回目を迎えました。
今回は、呼吸分野の話題だけではなく、多方面に応用可能である光学プローブについての話題も盛り込まれ、呼吸以外の分野の先生方からの参加もあり、多方面からのディスカッションが出来たように感じました。(参加者 計40名)
会の進行については、以下のとおりです。
開会の辞 昭和大学医学部・教授 本間 生夫先生
招待講演 「自発活動を可視化する光学プローブ」
中井 淳一先生 理化学研究所・脳科学総合研究センター 記憶学習機構研究チーム
乾杯のご発声 東邦大学医学部・教授 有田 秀穂先生
お食事しながら歓談・ディスカッション
呼吸性ニューロンネットワーク・呼吸中枢の最近の話題
-Topics- 「新生ラットの腹壁筋の呼息性活動」
飯塚 眞喜人先生 茨城県立医療大学・医科学センター
-Review-(特別講演)
「呼吸中枢をニューロンレベルで理解する取り組み:この20年」
江連 和久先生 東京都神経科学総合研究所・病態生理研究部門
呼吸性ニューロンネットワーク・呼吸中枢の最近の話題についての総合討論
記念品贈呈
東京都・神経研 江連 和久先生ならびに札幌医科大学・生理 青木 藩先生
閉会の辞 茨城県立医療大学・教授 佐々木 誠一先生
ディスカッションが盛り上がり、時間があっという間に過ぎて18:30に始まり22:00までの会となりました。
また、今期で東京都神経科学総合研究所を退官された江連先生と、札幌医科大学医学部第二生理学を退官された青木 藩先生には、呼吸ディスカッションの会より、この会に対する功績を称えて記念品を贈らせていただきました。第二の研究人生の中でも、今までと変わらず呼吸ディスカッションの会にご出席いただき、常にディスカッションを盛り上げていただけたらと思っております。
招待講演では、中井先生が自身で開発されたGFPを基にした細胞内カルシウムイオンに感受性をもつ蛋白質プローブ(G-CaMP)の作製秘話や、G-CaMPを用いたトランスジェニックマウスを作成し、小脳顆粒細胞の活動や、気管支平滑筋、血管平滑筋、心筋の活動の可視化についてお話いただきました。この光学プローブは自発活動を可視化することに成功しており、応用例はin vitro標本だけでなくin vivo標本にと広範囲に利用できるということでした。
呼吸性ニューロンネットワーク・呼吸中枢の最近の話題では、飯塚 眞喜人先生が「新生ラット腹壁筋の呼息性活動」という話題を提供して下さいました。麻酔あるいは除脳した新生ラットと新生ラットの摘出脳幹-脊髄標本で観察される腹壁筋の呼息性活動を比較すると、呼吸運動出力パターンの形成機構が見えてくるのではないかというお話でした。
さらに、特別講演として、江連 和久先生に「呼吸中枢をニューロンレベルで理解する取り組み:この20年」と題してお話いただきました。この20-30年間の呼吸中枢のニューロン機構について、江連先生の研究成果から呼吸性ニューロンの局在、発火パターン、軸索投射、末梢入力、シナプス結合、ニューロン回路、伝達物質等々、主にin vivo 標本で行われてきた機能・形態学的解析をもとにした呼吸中枢研究の現状を概説していただき、さらに未だ分かっていない重要なトピックについても解説していただきました。
3人の先生方の質の高い発表と、熱のこもったディスカッションで、非常に充実した時間を過ごすことが出来たのではないかと思いました。今後も、呼吸ディスカッションの会がその名のごとく、熱いディスカッションが出来る会として成長していければと思いました。
(文責、理化学研究所・脳科学センター・記憶学習チーム 荒田 晶子)