2011年度 JPS編集委員会報告

The Journal of Physiological Sciences (JPS) 編集委員会のご報告

JPS編集委員長 佐久間 康夫

2012年3月28日松本で国内委員43名のうち19名の出席を得てJPS編集委員会を開催し、JPS編集・刊行の現状と問題点について議論した内容をご報告いたします。

2007年に発足した現在のJPS編集委員会は1/3ほどの委員のご交代がありましたが、本委員会で5年を迎えました。この間入札を経て2009年第59巻から出版社をSpringerに変更し、電子編集システムを導入し2008年と2009年に本誌に掲載された計118の論文が2010年に160回引用されたので、Thomson Reuters社の2010年のImpact Factor (IF)は1.356となりました。学会事務センターの破綻に伴う出版社の変更などから2000年以来低迷していたIFが本誌史上最高となりましたが生理学系の雑誌では依然中位で一層の向上が急務です。良質の論文を集めさらに発展していけば3.0以上は決して不可能な数字ではありません。

ここまでのIFの上昇は前編集委員長、岡田泰伸先生のご決断で誌名を変更し国際化を目指したことが大きく貢献しました。実際2011年に引用された刊行年を問わないのべ被引用回数は962回、うちトップの210回は米国の著者によるもので、日本の著者による172回の引用を大きく上回っております。ついで連合王国(57回)、中国・台湾(53回)、オーストラリア(51回)、ドイツ(44回)と、誌名変更の目的であった国際化の成果には見るべきものがあります。特に京都における第36回国際生理学会世界大会 (IUPS 2009)以降、全世界からの投稿が増えており、2011年1年間の原稿総投稿数は230(委員会時点で未決26篇を含む)のうち日本国内からの投稿は62篇(受理31篇)、日本を除く東アジア67篇(受理10篇)、欧州44篇(受理7篇)、西アジア29篇(受理1篇)、南北アメリカ17篇(受理2篇)、大洋州2篇(受理1篇)となりました。なお、IUPS 2009のProceedingsはSpringerLink (http://www.springer.com/12576)からオープンアクセスになっておりますので、ご参照下さい。

これまで学会事務局の尽力で毎年科学研究費補助金の学術定期刊行物助成をいただいて参りました(2010年度350万円、11年度250万円、委員会時点では未決定でしたが12年度は280万円)。定期刊行物助成については最近見直しが行われ、2013年度からは「国際情報発信力を強化する取組を支援する方向で改善」する方針になり、一つの客観的指針としてIFがこれまでに増して重要視されると予測されます。内容的にも優れた総説の掲載、斬新なアイデアに基づく原著論文の掲載がIFの向上には不可欠です。総説については複数の先生が執筆をお引き受け下さり、本年後半に刊行の運びになっています。また、編集委員会では統計の使い方について、判りやすい総説を専門家に依頼して連載することが諒承されました。また、現行のReviewとは別個に、Focused ReviewかHot Topicsといったジャンルを設けて、若手研究奨励賞の受賞者に簡潔な原稿の執筆を依頼することが決まりました。編集委員も1,2年に1回は論文投稿を義務化するとの案が出されています。また、JPSは毎大会毎にSupplementを刊行しておりますが、上述の計算のようにAbstractは掲載論文には算定されず、引用回数にはカウントされます。そこで、発表されたAbstractを論文として発表される際に、どの雑誌でも結構です、JPSのAbstractを引用していただきたいと存じます。

国際情報発信力という点で現在国内の編集委員43名に加えて編集委員会のメンバーになっていただいている国外委員11名により積極的に参加したいただくため、現在年に2回差し上げている刊行状況の報告書送付に加え、2013年のIUPS Birmingham大会で拡大編集委員会を開催する提案がありました。IUPS担当幹事にお願いしておく必要があります。編集委員会の構成についても、委員の交代を図ること、投稿数の増加に対処するため現行の体制を変更し、Associate Editorを置いて業務の分担を図ること、これまで旧Japanese Journal of Physiologyの編集委員会規定を援用して運営してきたが、投稿分野の変化などで無理が生じていることが指摘されました。雑誌の経営面でも日本生理学会の財務に寄与できる存在となるよう、アメリカ生理学会や日本神経科学学会の運営を学ぶ必要が指摘されました。この点については、2013年生理学会大会長石川義弘先生がSan DiegoのEB Meetingでアメリカ生理学会の状況についてご調査下さることになりました。体力医学・運動学分野からの投稿の増加に応じて関係領域の委員を増員しましたが、今年から体力医学会がThe Journal of Physical Fitness and Sports Medicineの発刊を決定し、少なからぬ編集委員が重複して総説・原著の依頼論文を多数求めていることから、今後の協力関係を考える必要があるとの発言がありました。

その他利益相反の有無について、利益相反委員会の結論を待って、各論文の文末の適切な場所に記載すること、ミスコンダクトの回避のために、現在全共著者からcorresponding authorを経由せず、Springerに直接確認のe-mailの返信を求めていること、審査途上で二重投稿や不適切な画像処理が発見された事例と対処について意見を交換し、今回の編集員会を終わりました。