去る平成10年11月14日に日本生理学会の常任委員会が開催されました。常任幹事の一人としてこの会に出席しましたので、その一部をニュースとしてお知らせいたします。あくまでも日本生理学雑誌(日生誌)の編集委員の一人が書いた記事としてお読み下さい。議事録は、後日、日生誌に正式に掲載されます。
常任幹事会について
常任幹事会は、毎年春の生理学会大会の開催日の前日と11月頃の年2回、開催されています。この会は、各地区の評議員から選挙で選ばれた、31名の常任幹事で構成されています。毎回4時間を超す長時間の会議ですが、そこで日本生理学会の活動の基本方針が話し合われています。行動計画などの具体的な提案は、毎年学会中に開催される評議会、総会で審議・決定することになります。
日本生理学会の規模と予算について
平成10年10月現在で、生理学会の会員数は、3310人です。また、平成10年度の予算は約4000万円で、65%が会員からの会費収入です。企業などの賛助会員からも賛助会費を募集しておりますが、その額は、10%以下に留まっています。若手研究者の育成や国際学術交流のために、なお一層の関連企業や個人の賛助会員からの支援を募ることになりました。
日本生理学会奨励賞について
将来生理学会で活躍されることが期待される若手の研究者を励まし、研究の一層の発展を促す目的で奨励賞を設けることになりました。受賞対象者、選考委員の構成、受賞内容等について活発な意見交換があり、次回の生理学会総会では成案が審議されることになると思います。
「動物の保護と管理に関する法律(動管法)」の改正問題について
この法改正は、生理学分野の動物実験にも大きな影響を与えることが懸念されています。生理学会では、すでに昭和63年に「生理学領域における動物実験に関する基本的指針」を作成しております。会員諸氏は、その指針に従い、動物の福祉に関しても十分に配慮した倫理基準の下に動物実験を行っていることと思いますが、さらに具体的なガイドラインを生理学会の特別委員会である「動物実験に関する委員会」が作成しております。ガイドラインの原案についての詳しい説明があり、十分な審議がなされ、近く「生理学領域における動物実験における具体的方針」(仮称)として最終案が取りまとめられることになる予定です。
将来計画委員会からの提案について
カリキュラム改革に伴う生理学教育のあり方、若手研究者による「若手の会」の組織化、常任幹事会への女性研究者や若手研究者の参加などの提案がなされ、これらについて活発な議論がなされましたが、今後、関係する特別委員会等でさらに継続して検討することになりました。なお、「若手の会」については、幹事会としても積極的に支援することになりました。
ホームページの活用について
日本生理学会のホームページ(http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/psj/)に、各特別委員会からの報告や広報を掲載し、さらにこの媒体を積極的に活用することが提案されました。教官の公募なども生理学会事務局に申し込めば、編集幹事の判断の下に速やかに掲載できる体制にすることが了承されました。
日本生理学会大会について
次回の大会は、平成11年3月28-30日に長崎大学の主催で行われますが、「市民向け講演会の夕べ」、「特別招待講演会」、「19題以上のシンポジウム」など、意欲的な試みの準備状況について報告がありました。すでに具体的な内容についてはホームページを開設しているとのことです(上記の生理学会のホームページにリンクされています)。なお、平成12年の大会は、3月27-29日に慶応大学の主催で開催される予定です。さる平成11年3月27日に日本生理学会の平成11年度第一回常任幹事会が大会の前日長崎大学医学部で開催されました。常任幹事の一人としてこの会に出席しましたので、幹事会で報告、議論、決定された内容の一部をニュ-スとして報告いたします。
ここでは速報性と紙幅の都合上、会員諸氏に関心が高いと思われる項目のみについて、簡単に紹介します。詳しい議事録は後日、日本生理学会誌に掲載されます。
日本生理学会会員数の減少と賛助会費の現状
一般会員数は平成7年度の3、472名から平成10年度3、389名に年々減少し、準会員数も平成7年度196から平成10年度171に減少している。これら会員数の減少は会計収入の減につながり、学会としても憂うべき事態である。会員諸氏におかれましては会員数の増加にご協力いただきたい。
一方、生理学の発展と若手の育成と奨励のために設けられた関連企業の賛助会員には現在37社が加入しており、46口の賛助会費をいただいている。この賛助会費から下に紹介する若手奨励賞もまかなわれる予定である。
常任幹事の選挙結果と特別枠の検討
本年は常任幹事(任期3年)の改選期であり、各地区の評議員のなかから地区単位で選挙し、平成11年2月23日に選挙管理委員会を開催して開票の結果、次期生理学会常任幹事(任期は平成11年度-平成14年度)として下の31名が選出された。
北海道地区(2名) 青木藩 本間研一
東北地区(2名) 丹治順 土居勝彦
関東地区(5名) 小澤瀞司 貴邑富久子 工藤典雄 中島祥夫 坂東武彦
東京地区(7名) 植村慶一 金子章道 栗原敏 本郷利憲 本間生夫
御子柴克彦 宮崎俊一
中部地区(5名) 岡田泰伸 小野武年 久場健司 曽我部正博 西野仁雄
近畿地区(4名) 大森治紀 津本忠治 福田淳 松尾理
中国四国地区(3名) 菅弘之 瀬山一正 前田信治
九州地区(3名) 有田眞 堀哲郎 山下博
現在、常任幹事は地区毎に定員を決め、評議員による選挙で決めているが、将来計画委員会から女性や若手研究者および薬学、歯学、農学、理学などの分野の幹事を特別枠として入れることを考えてはどうかという意見があり、常任幹事会で検討されたが今回は結論が得られなかった。
国際生理科学連合会(IUPS)の動き
昨年夏にSankt. Petersburgで開催された第33回の国際生理科学連合会(IUPS)の総会はロシア経済の破綻のあおりを受けて大幅な赤字となり、招待講演者の旅費も払われていない現状であった。この事態に対して、IUPSの理事会でも赤字補填について検討が行われ、IUPS 加盟国の好意によってある程度の基金が集められた。日本生理学会からも、要請額の約60%であるUS$13,800の援助を行った。平成10年12月31日付でIUPS President Dr. Weibel から財務状況と赤字補填について最終報告があった。第34回IUPS総会の説明と日本からの出席を勧誘するためNew Zealand の Paul Hill 博士が来日され、準備状況を大会総会で報告される。
動物実験に関する委員会の報告
「動物の保護と管理に関する法律(動管法)」の改正のための自民党の草案では動物虐待に対する罰則の強化や動物販売業者への規制は含まれるが、動物愛護団体が求めていた動物実験への許可制や査察制度の導入は見合わされ、「自主管理」にとどめられている。動物実験に関する委員会でも日本生理学会会員研究者の自主管理を徹底するため「生理学領域における動物実験に関する具体的方針」と「動物実験研究ファイル」からなる「生理学領域における動物実験指針」の改定案を検討してきたが、これを成文化するために、さらに文言について検討を加え、いずれ日生誌上で改訂原案を公開して会員諸氏の意見を伺った上で、来年度の学会総会で決定することとした。
役員の改選
常任幹事会で投票の結果、新役員が次のように決まった。
庶務幹事————本郷利憲
会計幹事————栗原敏
編集幹事————金子章道
会計監事————植村慶一、宮崎俊一
国際交流委員会委員長——金子章道
動物実験に関する委員会委員長–中島祥夫
評議員選考委員会委員長—–宮崎俊一
選挙管理委員会委員長——本間生夫
研究費委員会委員長——-小沢瀞司
会則委員会委員長——–工藤典雄
将来計画委員会委員長——松尾理
なお教育委員会委員長は前委員長の推薦を受けて佐久間康夫が指名された。
JJP 編集委員の半数改選による新編集委員
常任幹事会で投票の結果、次の編集委員(任期4年)が決まった。
興奮膜生理——高橋国太郎
分子・細胞膜生理—岡田泰伸
感覚生理——-大森治紀
循環生理——-菅弘之、野間昭典
環境生理——-黒島晨汎
自律神経生理—–佐藤昭夫
日本生理学会大会について
第77回大会は、平成12年3月27、28、29日に慶応大学の日吉キャンパスで行われる。口演とポスターの別は発表者の希望に沿う。ただし、予稿集はすべて英文で作成して、JJPのプロシーデイングとして発刊し大会当日配布の予定である。(この件に関しては、翌々日開かれた総会で、従来どおりの方式を望む声が強かったので、これまでどおり邦文の予稿集を作成することになった)。第78回(平成13年度)大会は京都大学の川口、野間、大森、平野教授の当番幹事で、京都で開催される。
日本生理学会奨励賞について
将来の生理学会で活躍することが期待される若手の研究者を奨励することを目的として検討されてきた奨励賞の規定がほぼ次のように決められた。3年以上の正会員歴を有する満37歳以下の日本生理学会の会員を対象として応募者の中から毎年若干名を選考する。選考委員には直前の日本生理学会から第一段審査委員候補として推薦された科学研究費分科会委員があたる。奨励賞は個々の論文を対象とするものではなく、申請者の研究実績、研究構想と発展性を評価して選考する。なお、副賞は10万円の予定。
(編集委員福田淳記)