研究倫理委員会報告2011

1. 日本医学会主催の利益相反シンポジウムへの参加

今日の大学や研究機関にあっては、産学連携による研究が、臨床研究のみならず、基礎研究においても広く行われている。利益相反とは、民間からの研究費の受領や研究機関内のベンチャーに関わるなど研究者個人の利益と、研究成果が公正なものであるかの公的利益とが相反する状態をいう。つまり、科学的真実が利益誘導によって歪められていないかを示すことが社会的に問われている。個々の研究機関ではすでに利益相反のマネージメントが行われているが、研究成果の発表の場である学会主催の大会や学会誌にあっても利益相反の有無について公開が必要となってきている。そのため、日本医学会は2009年7月15日に生理学会を含む100以上の分科会の代表を集めて利益相反シンポジウムを開催し、学会における利益相反マネージメントの必要性を訴えるとともに、2011年の医学会総会までに、まだ利益相反委員会のない分科会にあってはそれを立ち上げるよう求めたものである。日本生理学会からは小西真人副会長と研究倫理委員長の蔵田が出席し、学会として今後対応することとした。

2. 2011年日本生理学会大会に向けて

  1. 大会のプログラム委員会で、演題募集の際に、従来の動物実験の研究機関承認の有無に加え、ヒトを用いた実験で臨床研究としての審査の有無、および利益相反の有無についてチェックボックスを設けることになった。今後、これらに関する新たな問題点が生じた場合、関連委員会で対策を検討するとともに、2012年以降の大会に向け準備することを確認した。
  2. 研究倫理員会としてこれまで単独で研究倫理シンポジウムを企画していたが、次回の大会では男女共同参画委員会とシンポジウムを共催することになった。研究倫理委員会として公正な研究と女性を含むキャリアパスを主題として話題を提供することとした。

3. 動物愛護管理法の見直しに向けての要望書提出

2011年に動物愛護管理法の見直しが予定されており、環境省中央環境審議会動物愛護部会および小委員会において検討が行われている。この中で「実験動物施設の届出制又は登録制等の規制導入の検討」、および「実験動物繁殖業者を動物取扱業に追加することの検討」が主要課題として取り上げられていた。これらは現行の法律が成立する際にも検討されたことであり、いずれも動物実験への重大な影響が懸念される。そのため岡田会長名の要望書を作成し、環境大臣あてに郵送するとともに、2010年10月19日に川上順子副会長が環境省動物愛護管理室室長に手渡しした。

(蔵田 潔)