079.電位依存性ホスファターゼVSPは、膜電位の違いによってイノシトールリン脂質の基質選択性を変化させる

VSPは、膜電位変化を感知する電位センサーと、イノシトールリン脂質を脱リン酸化する酵素を持ち、電位依存的に酵素活性を変化させる (Nature, 435: 1239-1243, 2005) 。これまで、VSPはイノシトールリン脂質(PI(3,4,5)P3とPI(4,5)P2: 括弧内の数字はイノシトール環状のリン酸の位置を示す)の5位のリン酸を脱リン酸化することがわかっていたが、3位のリン酸を脱リン酸化するかは不明であった。今回、蛍光プローブタンパク質を用いて細胞膜イノシトールリン脂質の動態を解析したところ、VSPはPI(3,4)P2の3位のリン酸を脱リン酸化することがわかった。面白いことに、膜電位が0 mVではPI(3,4,5)P3の5位のリン酸の脱リン酸化が優勢であるが、60 mVではPI(3,4)P2の3位を脱リン酸化する反応が優勢であった。VSPは膜電位に依存して酵素活性量を調節するだけでなく、基質特異性を変化させるユニークな特性を持つことが示された。
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図の説明

膜電位が0 mVではPI(3,4,5)P3の5位のリン酸を脱リン酸化してPI(3,4)P2が生じる反応が優勢であるが、60 mVではPI(3,4)P2の3位を脱リン酸化してPI(4)Pを生じる反応が優勢である。VSPは膜電位に依存して酵素活性量を調節するだけでなく、基質特異性を変化させるユニークな特性を持つことが示された。

Kurokawa T, Takasuga S, Sakata S, Yamaguchi S, Horie S, Homma KJ, Sasaki T, Okamuka Y, PNAS, 109: 10089-10094 (2012)