070.遺伝性不整脈疾患に関わるKCNQ1とKCNE1の複合体構成を直接数える

遺伝性不整脈疾患の一種である先天性QT延長症候群の原因遺伝子としても知られるKCNQ1 とKCNE1は、カリウムイオンを輸送するイオンチャネル複合体を構成するサブユニットをコードしており、心筋の電気活動の調節に寄与していると考えられている。両タンパク質がどのような比率で複合体を構成しているかについては長い間議論が続いていた。今回我々は、アフリカツメガエルの卵母細胞にGFPなどの蛍光性たんぱく質をつないだKCNQ1とKCNE1を発現させ、GFPの退色を一分子レベルで観察することで1つの複合体中に含まれるKCNQ1分子とKCNE1分子の数を直接数えることに成功した。それによると4つのKCNQ1分子(ひとつのイオンチャネル)に対し、0~4分子のKCNE1が結合できることがわかった。またKCNE1の発現密度がKCNQ1に対して相対的に高くなるほど、KCNE1分子の平均結合数が増える傾向にあることがわかった。KCNE1が結合するほどKCNQ1チャネルは開きにくくなるため、両タンパク質の発現密度を調節することが心筋の電気活動を調節する上で重要であると考えられる。

Nakajo K, Ulbrich MH, Kubo Y, Isacoff EY. (2010) Stoichiometry of the KCNQ1-KCNE1 ion channel complex. PNAS, 107: 18862-7

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図の説明

(右図)GFPにつないだKCNE1分子の一分子蛍光像。円で囲まれたスポットがひとつひとつがKCNQ1-KCNE1複合体を示す。(左図)矢印で示された各スポットから観察されたGFPの退色イベント。左上の例は2分子、左下の例では4分子のGFPすなわちKCNE1分子の存在が確認できる。