069.ストレス誘発体温上昇にはオレキシン神経細胞が必要である

ストレスに際し闘争・逃走反応を起こすという自覚的な行動の背後には、心拍や呼吸の増加・骨格筋への血流増加・一時的な鎮痛・体温上昇といった無意識の身体変化—防衛反応—が不可欠である。これらはエネルギー代謝・酸素供給・神経伝達や筋収縮の効率を増加させ、闘争・逃走反応の円滑な実行を支える。防衛反応のうち、循環・呼吸・鎮痛反応には視床下部の神経細胞に存在するオレキシンが不可欠であった(review: Resp Physiol Neurobiol 174: 43-54, 2010)。今回はストレス誘発体温上昇について調べたところ、意外にもオレキシン自体ではなくオレキシン神経細胞に共存しているその他の神経伝達物質が重要であろうとの結果を得た。オレキシン神経細胞破壊マウスではストレス誘発体温上昇が消失していたが、ノックアウトマウス(神経細胞は温存されているがオレキシンは作らない)では正常だったのである。共存伝達物質の重要性を示した初の報告であり、完全な防衛反応の発現には無傷のオレキシンニューロンが必要である、と結論した。

J Physiol 588 (21): 4117-4129, 2010. (see also perspectives p. 4067)
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