058.電気信号を化学的な情報に変換する酵素Ci-VSPは、膜電位上昇によって活性化される

細胞の内外の電位差(膜電位)は、膜電位変化を関知して開くイオンチャネルを介した、細胞間の情報伝達に用いられている。この情報伝達では、電気信号は間接的に、化学情報などに変換される。Ci-VSPは、イオンチャネルと同様の電位センサー構造と、イノシトールリン脂質を脱リン酸化する酵素を持ち、膜電位を感受して、酵素活性を変化させることにより、電気信号を直接化学信号に変換する、全く新しい機能を持つ酵素であった(Nature, 435: 1239-1243, 2005)。
膜電位変化により開口するイオンチャネルは、膜電位の上昇(脱分極)または下降(過分極)により活性化する性質を持つが、Ci-VSPが、脱分極、過分極のどちらで活性化するのかは不明であった。今回我々は、Ci-VSPを発現させたアフリカツメガエル卵母細胞において、蛍光プローブを用いた、細胞内のイノシトールリン脂質(PIP2、PIP3)の濃度変化の測定、および、PIP2により活性が上昇するイオンチャネル(IRK1, KCNQ2/3)の、電位変化による電流量変化の測定を行い、その結果、Ci-VSPは、脱分極により酵素活性が上昇する性質があることを見出した。
Ci-VSPは、電気信号を直接、化学情報に変換するタンパク質として、膜電位の新たな生物学的機能を明らかにする可能性がある。また、現在盛んに議論されている、電位センサーの動作原理を理解する新たなツールとして有用であると考えられる。Murata and Okamura, J. Physiol., 583: 875-889(2007)
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