グリアはニューロンに構造的・機能的なサポートを与えると共に、他のグリア細胞やニューロンとの間に精巧なネットワークを構築して、双方向的な情報 伝達を行っている。このグリア-ニューロン間情報伝達には、両細胞から放出されるグルタミン酸やATPが重要な役割を果している。今回私達は、虚血時にお けるアストロサイトからのグルタミン酸の放出に、マキシアニオンチャネルがその主たる通路を与えていることをはじめて明らかにした。
マウスアストロサイトには大型単一チャネルコンダクタンス(約400 pS)を持ったマキシアニオンチャネルと中間型単一チャネルコンダクタンス(数10 pS)を持った容積感受性・外向整流性(VSOR)アニオンチャネルのいずれもが発現しており、それらはそれぞれ虚血刺激と細胞膨張刺激で活性化され、そ れらのアニオンチャネルのポアサイズはグルタミン酸のサイズ(有効半径0.35 nm)はより大きく、有意のグルタミン酸透過性(それぞれPglutamate/PClは0.2と0.15)を示した。アストロサイトは虚血刺激に対して グルタミン酸放出応答を示し、マキシアニオンチャネルのブロッカーは最も強くこれを抑制し、VSORブロッカーも弱いながら有意に抑制した。一方、これま でグリアからのグルタミン酸放出に関与すると報告されてきたグルタミン酸コトランスポータ逆回転やギャップジャンクションヘミチャネルやエクソサイトシス に対するブロッカーは無効であった。またシスチンは添加していないので、シスチン/グルタミン酸交換輸送の関与も除外された。以上の結果より、アストロサ イトの虚血性及び細胞膨張性のグルタミン酸放出の通路に主としてマキシアニオンチャネルが、そしてマイナーながらVSORアニオンチャネルも関与すること が明らかとなった(Glia 54, 343-357, 2006)。
図の説明
マウスアストロサイトからの虚血性グルタミン酸放出に関与する通路としてのアニオンチャネル。これまで報告されてきた通路候補(ギャップジャンクションヘ ミチャネル、シスチン/グルタミン酸交換トランスポータ、ナトリウム-グルタミン酸コトランスポータ逆回転、エキソサイトシス)は虚血性グルタミン酸放出 には関与しないが、その他の通路のマイナーな関与の可能性は残る。