起電性Na+-HCO3–共輸送体(NBCe)は 膵臓導管や腎臓近位尿細管などにおける上皮性HCO3–輸送において重要な役割を果たすと考えられ てい る。しかし、これまでHCO3–輸送上皮に内因性に発現する(ネイティブ)NBCeのトランスポータ電流 の電気生理学的性質は明らかにされていなかった。 我々は反芻動物耳下腺が非常に高いHCO3–分 泌能を有することに着目し、単離ウシ耳下腺腺房細胞にホー ルセルパッチクランプ法を適用することにより、ネ イティブNBCe電流の詳細な電気生理学的及び薬理学的性質を明らかにすることに成功した。このネイティブNBCe電流はウシ耳下腺由来NBCe1-Bを 強制発現させたHEK293細胞から観察されたNBCe1-B電流とその特徴が多くの点で一致した。また、セルアタッチモードで測定される K+電流の逆転電位の変化から膜電位変化を推定する方法により、非刺激時のウシ耳下腺腺房細胞の膜電位の 形成に NBCeが関与しうることを示した。(J Physiol. 568.1, 181-197, 2005)