代謝型グルタミン酸受容体は、記憶・学習などに重要な働きを持つ蛋白質です。代謝型受容体はG蛋白質と共役し、細胞内のセカンドメッセンジャー (Ca2+ やcAMPなど)を介して細胞応答を引き起こします。このようなシグナル伝達では、受容体は一種類のG蛋白質と共役するため、ON-/OFF- スイッチとして働くと考えられていました。ところが、代謝型グルタミン酸受容体は複数のG蛋白質と共役して様々な細胞応答をもたらします。今回、われわれ は、異なる結合部位を持つグルタミン酸とGd3+では、活性化されるシグナル伝達経路に差異が生ずることを見出しました。この結果は、結合する物質の種類 により受容体の活性型構造が異なり、活性化されるシグナル伝達経路も異なることを示唆しています(図)。すなわち、代謝型グルタミン酸受容体が、単なる ON-/OFF-スイッチではなく、刺激の種類によって出力の種類を切り換える、マルチパスレギュレーターとして機能しうるということも示唆しています (Tateyama, M. & Kubo, Y. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、2006、103、 1124-1128)。
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