脳においてシナプス後部からシナプス前終末に向けて、通常とは逆向きの情報伝達が行われることが知られている。最近の研究か ら、このような逆行性シナプス伝達を担うのが内因性カンナビノイド(脳内マリファナ類似物質)であることが明らかになった。内因性カンナビノイドの発生 は、(1)細胞内のカルシウム濃度上昇、(2)Gq型の三量体GTP結合蛋白質に共役する受容体の活性化、という2つのシグナルがシナプス後神経細胞で同 時に起こると強く誘導される。今回私達は、Gq共役型受容体を介する内因性カンナビノイドの発生にホスホリパーゼCβ(PLCβ)が必須であり、また、そ のPLCβの活性化がカルシウム濃度上昇により促進されることを見いだした。すなわち、PLCβが(1)と(2)の2つのシグナルの同期性検出分子として 働いていることになる(Neuron 45: 257-268, 2005)。
これは、内因性カンナビノイド産生のみならずPLCβが関与する様々な細胞内シグナル伝達系のはたらきを理解する上で重要な発見である。