脳虚血に伴われる乳酸アシドーシスは、ニューロンとグリア細胞に持続的細胞膨張をもたらして、 脳腫脹とそれに続く細胞死を引き起こす。一定に維持されるべき細胞の容積が、乳酸アシドーシス環境下では持続 的に増加するので、容積調節機能が障害されていると考えられてきたが詳細は不明であった。私達の研究の結果、 乳酸アシドーシス条件下においては乳酸とプロトンとNa+の細胞内蓄積によってこれらの細胞は膨張す るが、その持続は容積調節に関与すべき容積感受性アニオンチャネルがこの条件下では抑制されていることに因る ことが明らかになった。更には、その膨張持続は、カチオンチャネルイオノフォア投与では影響を受けないのに対 して、外来性アニオンチャネル導入によって速やかに阻止されて、正常容積に回復することが示された。容積感受 性アニオンチャネルをターゲットにした虚血性脳障害の防御の可能性が拓かれた。 (これらの成果は次の二つの論文に発表された:Brain Res. 957,1-11, 2002; GLIA 41, 247-259, 2003)