日常生活で我々が行動するとき、通常、目標を達成して報酬を得ようというモチベーション(動機付け)によって行動を計画しそれを実行に移す。この際、我々は目標に近づくほど期待が高まる。この期待の大きさは脳内のどこでどのように表現されているのだろうか?この点を調べる為、我々はモチベーションの大きさをコントロールして報酬期待の大きさを調べることのできる実験課題を開発した。この課題は「画面中心にあるターゲットの色が赤から緑に変わったら、1秒以内にバーから手を離す」という単純な試行から成る。通常の課題では、この試行を1回正解すればサルに報酬のジュースが与えられるが、ここでは4回正解しないとジュースが得られないとした。するとサルは1回目、2回目、3回目と報酬に近い試行ほど正解率が上がり、報酬への期待が高まった。この時、サルの前頭葉内側部にある前部帯状皮質より単一神経細胞の活動を記録・解析したところ、図のようにスケジュールが進行するに従って反応強度が徐々に大きくなるものがあることが分かり、報酬への期待の大きさを表していると考えられた(Science 296: 1709-1711)。