ストレス時に細胞内から放出されるATPは細胞間シグナル伝達に重要な役割を果たす。その放出機序はエキソサイトーシスによるものとそうでないものがある。後者の通路としてマキシアニオンチャネルが多くの場合に関与することを私達は提唱してきた。今回、非電解質有機分子(PEGなど)のポア内侵入によるシングルチャネルコンダクタンスの減少を指標にポアサイズを測定したところ、このチャネルのポアは半径約1.3 nmでありATPのサイズ(半径約0.6 nm)より充分に大きいことが明らかとなった(Biophys. J. 87: 1672-1685, 2004)。
虚血・低酸素時の心臓ではATPが細胞外液に放出されることは古くから知られていたが、どこからどのように放出されるかは不明であった。今回私達は、虚血、低酸素あるいは細胞膨張刺激を与えると心筋細胞自身からATPが放出され、その放出路はマキシアニオンチャネルによって与えられることを証明した(J. Physiol. (London) 559: 799-812, 2004)。
図の説明
心筋細胞に虚血、低酸素あるいは細胞膨張刺激を与えると、2-4価のアニオンであるATP(半径約0.6 nm)が放出される。この通路は半径約1.3 nmのポアをもったマキシアニオンチャネルである。(チャネルのほぼ中央部にATP結合サイトがあることは以前に示した: J. Gen. Physiol. 118: 251-266, 2001)。またチャネル内には刺激によってチャネルを開けるスイッチがあるものと想定される。)