電位依存性プロトンチャネル(Hv1/VSOP)は主に免疫系細胞に発現し、活性酸素の産生を制御することが知られていました。一方、肝臓には常在性マクロファージであるクッパー細胞が存在することが知られていましたが、クッパー細胞におけるHv1/VSOPの役割は不明でした。今回我々は、(1)Hv1/VSOPが肝臓でクッパー細胞特異的に発現していること、(2)Hv1/VSOPがクッパー細胞による活性酸素産生を抑制する役割を持っていること、(3)肝組織の酸化ストレスに寄与することを明らかにしました。
また、我々はHv1/VSOPを欠損したマウスが加齢依存的に高血糖の症状を示すことを見出し、これには肝臓への酸化ストレスに応じて生じる糖代謝関連遺伝子の発現変化が関わっていることが示唆されました。我々は過去にもHv1/VSOPが加齢依存的に脳の酸化ストレスを制御していることを見出しており(Kawai et al, J Neurochem, 2017)、今回の報告は、Hv1/VSOPが加齢と密接な関連性を有することを裏付けた発見です。
論文タイトル Regulation of hepatic oxidative stress by voltage-gated proton channels (Hv1/VSOP) in Kupffer cells and its potential relationship with glucose metabolism. 全著者名Kawai T, Kayama K, Tatsumi S, Akter S, Miyawaki N, Okochi Y, Abe M, Sakimura K, Yamamoto H, Kihara S, Okamura Y 雑誌名FASEB Journal 巻(号): in press
<図の説明>
今回クッパー細胞のHv1/VSOPが活性酸素産生を制御することを明らかにし、またこれが糖代謝に関わることが示唆されました。