119. 有機アニオントランスポータSLCO2A1はマキシアニオンチャネルMaxi-Clのコアコンポーネントであり、心臓での虚血-再灌流時のATP放出に関与する

マキシアニオンチャネル(Maxi-Cl)は巨大単一コンダクタンス(300-500 pS)と大型ポア(直径1.1-1.5 nm)を持ち、心筋、脳、腎臓などにおいてATP放出性アニオンチャネルとして機能することが示されてきた。しかし、その分子実体は、長い間不明であった。本研究ではMaxi-Clを構成するコア分子はプロスタグランジントランスポータ(PGT)として働くことが知られているSLCO2A1(solute carrier organic anion transporter family, member 2a1)タンパクであることを、図に示すプロテオミクス実験によって選別・同定した。そして、①SLCO2A1の発現をノックダウンまたはノックアウトするとMaxi-Cl電流が減少・消失し、②SLCO2A1の強制発現や人工膜への再構成によりMaxi-Cl様の電流が発生することを示し、これを立証した。さらに③培養細胞においてSLCO2A1の発現をノックダウンすると、低浸透圧刺激によって誘発されるATP放出が減少し、④SLCO2A1の発現をin vivoノックダウンしたマウス心臓において虚血-再灌流時に誘発されるATP放出量が減少することを示し、これがATP放出性アニオンチャネルであることを実証した。さらには、PGT機能の阻害剤がMaxi-Cl電流を顕著に抑制することを示し、SLCO2A1はトランスポータとチャネルのdual functionを示すタンパクであることを明らかにした。本研究論文はEMBO J誌にオンライン出版された1。また、本論文は掲載誌のNews & Reviewで紹介された2

1)Ravshan Z. Sabirov, Petr G. Merzlyak, Toshiaki Okada, Md. Rafiqul Islam (equal contribution), Hiromi Uramoto, Tomoko Mori, Yumiko Makino, Hiroshi Matsuura, Yu Xie, and Yasunobu Okada* (*corresponding author): An organic anion transporter SLCO2A1 constitutes the core component of the Maxi-Cl channel. The EMBO Journal, e201796685, 2017. DOI 10.15252/embj.201796685

2)Daniel L Minor: Channel surfing uncovers a dual-use transporter. The EMBO Journal, e201798304, 2017. DOI 10.15252/embj.201798304

PowerPoint プレゼンテーション

 Maxi-Clを豊富に発現している細胞(C127)の膜ブレッブからタンパクを抽出し、質量分析に供した。その中に含まれていたSLCO2A1がMaxi-Cl分子実体の候補として選別され、さらにノックダウン、ノックアウト、強制発現、人工膜再構成、薬理等の実験を経て、最終的にATP放出路であるMaxi-Clのコアコンポーネントとして同定された。(本論文のSynopsis図より改変。)