2019年度 入澤彩記念女性生理学者奨励賞

第10回入澤彩記念女性生理学者奨励賞(入澤彩賞)学会賞

 

倉原琳(香川大学医学部自律機能生理学)

「伝統的な漢方薬大建中湯は消化管筋線維芽細胞のTRPA1チャネルを活性化して線維化を改善する/Daikenchuto, a traditional herbal medicine, ameliorates fibrosis by activating TRPA1 channel in intestinal myofibroblasts」

 

第10 回入澤彩賞選考の報告

入澤彩賞選考に関する業務をWPJ(生理学女性研究者の会)は生理学会より委託されていますが、実際の選考は選考委員(男女両性により構成)が行います。WPJ としては選考の公平性を保つため、選考過程をできるだけ公開したいと考えております。

本年度の応募者は6 名でした。以下に、第10 回入澤彩賞の選考がどのように行われたかをご報告いたします。

1. 選考委員の選出

選考委員の選出において注意した点は①年齢層が偏らない②応募者のそれぞれの研究分野に比較的近い研究者③応募者と師弟関係や共著者などの関係がない研究者です。 これらに注意し、研究者5 名(男性2 名、女性3 名:WPJ 会員1 名、WPJ 非会員4 名)に選考委員を依頼しました。選考委員決定後、応募者から提出された申請書等一式を選考委員に郵送し、選考をお願いしました。

2. 選考委員会による選考の流れ

選考委員会では次の手順で厳正な選考が行われました。選考委員⾧からの報告は以下の通りです。

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[1] 応募資格の確認

6 人の応募者全員が、応募対象である 「日本生理学会の会員で、3 年以上の正会員(学生会員を含む)歴を有する女性の生理学研究者であること」 に該当することが、WPJ 運営委員会によって確認された。

[2] 利害関係者の有無の確認

5 人の選考委員全員が、6 人の応募者のいずれとも利害関係に無く、全選考委員が全応募者を問題なく審査できることを確認した。

[3] 選考手順

委員長から委員に対し選考手順を提案し、委員による確認および修正を踏まえて、以下の手順で選考を進めることとした。

(1) 流れ

書面審査を行い、その採点を集計。集計結果を基に、メールもしくはSkype 等により合議選考。

(2) 書面審査の方法

(a) 採点項目

(項目1) 総合判定

(項目2) 職場・家庭環境を変える大きな出来事を乗り越えて(の活躍)

(項目3) 優れた研究業績

(項目4) 若手人材の育成、および、その他の活動

の4 項目について採点。フリーコメントの記入欄も設ける。

(b) 配点

採点項目ごとに、各委員は、21 点を持つ。

採点項目ごと、最高点は「必ず」 6 点、最低点は「必ず」 1 点をつける。

(すなわち、絶対評価ではなく相対評価)

ある委員の、ある項目の、6 候補者についての採点例

例1: 6, 5, 4, 3, 2, 1; 例2: 6, 5, 5, 2, 2, 1

例えば、5 段階評価で自由に採点してよいことにすると、(a) 幅を持って採点する委員の意見がより強く反映される、(b) 4 点や3 点ばかりになって、1 点は、ほぼつかず、その結果、集計点に差がつかず困る、ということがあるので、このように設定した。

(c) 集計

[[ 評価順位は 「(項目1) 総合判定」の順位に、重きを置く。 ]]

各委員が、上記の、賞選考のポイントを理解し共有することは、非常に重要である。それでもなお、各候補者のどの項目により注目して選考するかは、委員ごとに違いもあると考えられる。そのため、個別項目(2) (3) (4) に重みづけして集計して順位を決める方法では、重みづけの適切な決定が容易ではなく、また、各選考委員の考えが適切に反映されない可能性も考えられる。そのため、今回の選考においては、個別項目(2) (3) (4) およびその合計点ではなくて、「(項目1) 総合判定」 の集計結果に重きを置くこととした。なお、採点を集計したシートでは、採点に対する各委員の氏名の紐づけは行わなかった。

(3) 決定

「項目(1) 総合判定」 の集計結果を基に、項目(2) (3) (4) の集計結果もにらみつつ、メールもしくはSkype 審議を行う。

点数が近接した複数の候補がある場合や、項目 (1) による順位と 項目 (2) (3) (4) の単純合計点による順位が異なる場合等、特に慎重に審議を行う。

できる限り合議での決定を目指すが、必要に応じて、上位2 人(もしくは3 人)で、決するまで決選投票を行う。

[4] 選考過程、および結論

上記に従って、書面選考を行い、集計した。その結果、「項目(1) 総合判定」 および 「項目 (2) (3) (4) の単純合計点」 いずれにおいても、1名の応募者が、第1 位 となった。次点の応募者は、「項目(1) 総合判定」、および「項目 (2) (3) (4) の単純合計点」、いずれにおいても、第2 位の高スコアを得た。

決選投票の要不要等についてメール審議を行い、5 人の選考委員のうち4 人が 「項目(1) 総合判定」、および「項目 (2) (3) (4) の単純合計点」 いずれにおいても、1名の応募者により高い得点をつけていたこと等から、決選投票は行わず、受賞者を決定した。

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3. 選考結果の承認

選考委員⾧より上述の選考結果が報告され、WPJ 運営委員会はそれを承認し、受賞者が決定されました。選考委員および入澤彩賞に応募してくださった方々、その他関係者の方々に深くお礼申し上げます。

2019 年度WPJ 運営委員⾧ 吉村由美子