日本生理学雑誌 第88巻1号

CONTENTS

表紙の説明

大会名:APPW·2025(第102回日本生理学会大会)
演題番号:2P-170
演題名:温度低下が内皮細胞内カルシウム濃度調節に与える影響
演題名(英語):Calcium Release Pathways in Endothelial Cells:The Impact of Sudden and Gradual Temperature Decline on[Ca2+]i Regulation
演者:船木菜々子1, 平井佑希1,成瀬恵治2,森松賢順2
所属:1 岡山大学医学部医学科,2 岡山大学学術研究院医歯薬学域

説明(キャプション):
細胞は,外環境の物理刺激変化に対して,柔軟かつ適応的な応答を示す.その中でも温度変化は,細胞の恒常性や生存を左右する重要な外環境因子の一つである.これまでに温度感受性チャネルを中心とした分子機構の研究は大きく進展してきたが,温度変化に伴う細胞内カルシウム濃度動態の詳細な挙動や,それに関与するシグナル伝達経路については不明な点があった.そこで本研究では,ライブイメージングを用いて,温度変化に対する細胞内カルシウム濃度上昇の動態変化をリアルタイムで解析した(図A).その結果,26℃から42℃への急激な温度上昇により細胞内カルシウム濃度が顕著に上昇し(図B,D),温度を再び26℃に急速に戻すことで,さらに細胞内カルシウム濃度が増幅することを見出した(図C,E).また,成長因子受容体の阻害によりこれらの応答が抑制されたことから,成長因子を介したシグナル伝達経路が,温度変化に対するカルシウム濃度応答シグナルの制御に関与することを示唆された.温度変化パターンに応じて応答することで,急激な温度変化に伴うストレスに対して適応する戦略を細胞は備えているようである.我々が見出したこれらの知見は,新たな細胞の外環境応答メカニズムの理解に貢献すると考える.
A:急激な温度変化に対する細胞内カルシウム濃度を計測した.
B:26℃から42℃への急激な温度上昇は,細胞内カルシウム濃度を増加させた.
C:42℃から26℃への急激な温度低下は,細胞内カルシウム濃度をさらに増加させた.
D,E:急激な温度変化に対して,細胞内カルシウム濃度指示薬の蛍光強度値を計測した.
26℃での蛍光強度値(F0)を基準に,各温度変化に対する蛍光強度の変化をF/F0で計測した.
利益相反の有無:なし