研究倫理委員会(2005.5.27)

感染症防止や遺伝子操作動物拡散防止などの対策に伴って、結果的に動物実験が法的な影響を受ける事態が続いている。動物実験に関する社会の理解を増強するための方策を進めるとともに、情報収集に努めることが重要であろう。

研究倫理委員会報告

2005年 5月27日

感染症防止や遺伝子操作動物拡散防止などの対策に伴って、結果的に動物実験が法的な影響を受ける事態が続いている。動物実験に関する社会の理解を増強するための方策を進めるとともに、情報収集に努めることが重要であろう。
本委員会は通常は電子メールを通じた議論および決定を行っているが、仙台での総会前日の 5月17日 午前10時から委員会を開催し、報告と議論を行った。

1.動物愛護管理法について

動物愛護管理法の改定案は今国会に上程予定であるが、与野党5党の合意案が 4月28日に公表された。実験動 物については、これまでの「苦痛を除去すべきこと」という記載に加えて、「動物数減少」・「可能な場合に代替法を用いる」ことが記載された。

2.動物実験の統一ガイドラインについて

第19期日本学術会議第7部提言にもとづき、動物実験の統一ガイドラインを作成するための取り組みが進んでいる。実験動物中央研究所の玉置副所長の提案で、これまでに3度の意見交換会(1~3月)が行われ、動物実験に携わる十数団体の関係者が出席、意見を交換した。意見交換会の方針に基づき、詳細指針策定ワーキンググループ(WG)が編成され作業が進められている。

3.動物の輸入についての問題

特にマウス・ラットについて、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成15年10月16日改正)」と「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成16年 9月15日改正)」)に基づき、平成17年 9月から「動物の輸入届出制度」が施行され、

  1. 輸出国政府機関による当該動物保管施設の指定
  2. 輸出国政府による衛生証明書(動物に添付)
  3. 輸入者は厚生労働大臣に動物種、数、その他の事項を届出

という3点の手続きが輸入のつど必要になる 。施設・時間の制約のため、実質的に実験動物の輸入が不可能になる可能性が濃厚である。生物科学学会連合の14学会が連合し、厚生労働省へ「要望書」を提出するなどの活動を行った。最近、この法律の施行規則の改正が準備され、最悪の事態は避けられる見通しである。

4.研究倫理委員会シンポジウム (2005年、仙台 )

  1. 動物実験に対する社会的理解を一層、促進するために学術会議第7部の提言がなされている。この点について、第19期会員である金子会長に学術会議の提言とその周辺の動きについて報告をお願いした(動物実験に対する社 会的理解を促進するために(提言):第19期日本学術会議第7部報告について)。
  2. 実験動物の安定供給について、サルのナショナルリソースプロジェクトの現状について生理研の伊佐教授に報告をお願いした(「ニホンザルバイオリソースプロジェクト」の現況)。供給可能な状況になった(希望者は伊佐教授に連絡)。
    なお、群馬大会でのシンポジウムについて検討した。

(板東 武彦)