本年度は、日程の都合で、研究倫理委員会シンポジウムをもって委員会開催に代えた。なお、研究倫理委員会委員長は3月末日で板東が任期終了になり、新しく粟生常任幹事が委員長に就任した。このため、研究倫理委員会シンポジウムの報告で、委員会報告に代えさせていただくこととなった。シンポジウムでは2人のシンポジストにご講演をいただき、次いで討論を行った。玉置憲一先生(日本学術会議、前動物実験研連委員長)、「動物実験ガイドラインと自主管理の現状」、小林和人先生(福島県立医科大学医学部)、「動物の輸入届出制度」。
第一の話題は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(平成11年12月改正,平成12年12月1日施行)の改正に関わる。この改正案は2005年5月に通常国会で可決され(平成17年法律第68号)、2005年6月22日に公布された。この改正により、3R(reduction, replacement, refinement)で表現される動物取り扱い原則が法律に明文化された(改正法の第41条)。この原則はすでに、動物実験を行う研究者の中では常識になっていたが、誤解を防ぐために明記された。施行規則ならびに「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55年3月27日総理府告示第6号,平成14年5月28日一部改正)などの改定が中央環境審議会の審議を経て施行される。動物実験に関わる事項は研究機関の自主管理に委ねられる。これを受けて、文部科学省は、科学技術・学術審議会の研究計画・評価分科会ライフサイエンス委員会に検討部会を設け、実験動物の取り扱いについての統一ガイドライン制定等について検討を進めた(生理学会・神経科学学会は共同でヒアリングにおいて意見を述べた)。このような仕組みは、第19期学術会議第7部提言「動物実験に対する社会的理解を促進するために」に述べられたものであり、このときの責任者であった玉置先生に来ていただいて、従来の経緯とこれからの展望について講演をいただいた。自主管理の仕組みと、その軸となる統一ガイドラインの制定が進められているが、後者については、現在、ライフサイエンス委員会および新・学術会議第2部の委員会(玉置先生は連携会員)で検討され、近日中に制定される。前者は相互査察に基づいて、自主管理が行われる方向にある。
第二の話題は、動物輸入制限に関するものである。ペットによる国際的な感染症の伝播を防止するために、厚生労働省は動物の輸入検疫を強化した(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療にかんする法律(平成15年10月16日改正)」、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成16年9月15日改正)」に基づく「動物の輸入届出制度」、特にげっ歯類に厳しい)。国際的な遺伝子改変動物の連携等に大きな支障が生ずることを憂慮し、関連13学会・全国医学部長会議など陳情を行い、健康管理が厳重に行われている実験動物について特例措置を求めた。これを受け、厚生労働省は検疫条件等に若干の特例が設けた。相手国によって異なるが、通関にあたっては厳しい条件が課される可能性が大きい。実験動物輸入業者は対策を立てているので、関連業者とよく相談する必要がある。なお、これとは別に環境省は、ペットなどとして輸入された動物の自然界での繁殖を防ぐために、特定外来動物の指定を行い、指定された動物については、飼育や購入について許可が必要となった(外来生物法)。食用カエルやアメリカザリガニなどは届出が必要であると考えられる。詳細は環境省のホームページ(http://www.env.go.jp/nature/intro/6tetuzuki.html)に記載されている。