第5回国際医学生生理学クイズ大会2007報告

第5回国際医学生生理学クイズ大会2007報告

女子栄養短大 渋谷まさと

鳥取大学医学部 河合康明

大会概要

マレーシア大学医学部生理学教室のCheng教授らにより、国際医学生生理学クイズ大会International Inter-Medical School Physiology Quiz (IMSPQ)が2003年から毎年、活発に開催されています。今年は、東マレーシアSabah州のKota Kinabaluで9月1日(土)に第5回大会が開催され、日本から我々二人がspecial guestとして参加しましたのでご報告します。大会長はマレーシア大学Sabah校(UMS)医学部生理学のUrban D’Souza准教授でした。開始当初はマレーシア国内だけからの参加でしたが、今年はマレーシア、ブルネイ、シンガポール、香港、台湾から合わせて20チームの参加があり、基本的に勝ち抜き戦でした。

どんな問題がでたのか

1チームから3人ずつ参戦し交互に下記のような問題が出され、口頭で回答しました。最初の回答機会は1個人に与えられるものであり、正解の場合は5点です。次の回答機会は、同じ学校の他のメンバーであり、正解の場合は3点です。最後の回答機会は、対戦学校のメンバーであり、正解の場合は1点です。個人回答に続き、チームで回答する問題が出題されます。この場合は、3人のメンバーが相談することが許されます。 1回の対戦では18題で3回巡するわけです。実際にある対戦での18題とその正解を記載します。 軸索が切断された場合、末梢端での変性の名は(ワーラー変性) 興奮性組織の電気的活性を調べる装置は(オシロスコープ) Thorel路はどこにある? (洞房結節と房室結節との間) 心房と心室との間に電気的活動を通す唯一の部位は(房室結節) 肺気量曲線において、最大吸気位と最大呼気位との差の体積は(肺活量) 静脈血のPO2分圧は(40 mmHg) ADHの別名は (パゾプレッシン) 求心性末梢神経の末端にある構造物は(感覚受容器) 海面レベルでの酸素量は(21%) ボツリヌス毒を出す菌は(Clostridium botulinum) 視床下部での浸透圧受容器を刺激するのは(高浸透圧) 心電図でST部分の持続時間は(0.3秒) 出血時間が延長し凝固時間が正常な病態は(血小板減少症) 乳汁生成促進ホルモンは(プロラクチン) 振動覚、触覚を伝える1次感覚性神経はどこで終わる(延髄薄束、楔状束) 高度が高くなると、空気の組成比率はどう変化する(不変) 骨格筋が持続的に収縮している状態は(tetanus) 睾丸が降りてこない状態の名は(停留睾丸) ご覧のように,多少「クセ」があると思わせる問題もありますが、基本的には、医学生なら誰でも十分に答えられる(はずである)問題が多いと思われます。その他、ノーベル生理学賞受賞者、略語の意味(ACTHなど)、与えられたデータから計算により回答を求める問題などが出題されていました。

アジア学生気質

今回、医学生の歓迎ぶりには感激しました。5年制の2年生全76名を中心に100名強のUMS医学生がサポート役として活動してくれました。我々はspecial guestとしてもてなされ、空港への送迎、市内の案内、大会中の案内なども含めて、実に行き届いた歓迎ぶりでした。大会参加の学生の宿、移動のアレンジもUMS医学生がやっていたようであり、学会請負の会社などはほとんど使われていなかったようです。 大会中も、多民族国家を象徴する様々な民族衣装でのお迎え、儀礼的ではない笑顔、自分らの研究プロジェクトの発表、司会、点数の記録、写真撮影など、裏方で大活躍でした。大会後の夜は「culture night」が開催され、10を超える音楽、踊りの披露、くじ引き大会、夕食で大いに盛り上がりました。ホスピタリテイーやアトラクションは、普段のクラブ活動の成果と思ったのですが、そうではなく、この大会のために結成されたボランティア活動であり、種々の費用は学生の持ち出しだったそうです。また、この大会のために1ヶ月間は忙しすぎて勉強ができず、大会前後は、連夜数時間の睡眠になってしまったとのことでした。

将来的考察

日本の医学生が参加することに関しては、毎年、日本生理学会大会にも参加しているCheng教授(IMSPQ創立メンバー)から、日本生理学会の先生方と医学生の方たちへ招待が届いています。来年の開催地はおそらくクアランプールであろうとのことでした。日本からは7月下旬か8月初旬が一番参加しやすいことを伝えたところ、マレーシアの実情にも十分あった範囲であり、前向きに検討するとのことでした。また、出題者の英語発音に訛りがあり、聞き取りにくいこともあったのですが、問題文をスクリーンに表示することは、事前にリクエストすれば対応してもらえるとのことです。また、医学生は低学年である必要はなく、しっかりと復習もできた高学年生も参加資格があるとのことです。 どの医学部・医科大学にも英語が堪能で向上心旺盛な学生が何人かはいると思われます。そのような学生が英語で生理学を勉強する動機付けの一つに十分なり得るのではないかと思います。しっかり勉強すれば上位進出も夢ではないと思います。また、上記の通り、アジアの町や人々の心には、日本も含まれるようになってしまった先進国では失われつつあるものが残されており、とかく、欧米に向かいがちな視野を広げる意義も十分にあると思われます。

pict20080108011516 アジア各国からの多数の参加者

pict20080108012024 大会運営幹部と優勝チーム